2012 年 35 巻 5 号 p. 439-445
症例は79歳男性.2009年12月に両膝関節の疼痛・腫脹で発症し,その後,朝のこわばり,両手関節,手指の関節,両肘関節の疼痛,腫脹,両肩関節痛,頚部痛,腰痛,運動制限が出現し歩行困難となり,2010年1月当科受診した.対称性多関節炎,CRP高値を認めたが,リウマトイド因子と抗CCP抗体は陰性であった.非ステロイド抗炎症薬の投与を行ったが関節痛の改善は得られなかった.食欲不振と貧血の精査のため上部消化管内視鏡検査を施行したところ,幽門部に胃癌を認めた.胃癌切除後速やかに多関節炎は軽快しCRP値も低下した.Carcinomatous polyarthritisは,関節リウマチと類似した多関節炎を呈し,しばしば潜在性悪性腫瘍に先行して発症し,悪性腫瘍の治療により軽快する「腫瘍随伴症候群」の一つであり,まれではあるが見逃さないことが重要な疾患であると考え,報告する.