日本臨床免疫学会会誌
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原著
自己免疫性疾患に合併したニューモシスチス肺炎に対する中等量ST合剤を用いた治療の副作用と予後
柴田 朋彦殿岡 久美子土田 興生三冨 博文柴田 俊子勝山 直興
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2016 年 39 巻 3 号 p. 213-218

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抄録

  自己免疫性疾患患者に合併したニューモシスチス肺炎(pneumocystis pneumonia; PCP)に対するST合剤を用いた治療において,ST合剤の投与量,副作用発現頻度,ST合剤の継続率,さらに予後の後ろ向き調査をおこなった.対象は2013年4月1日から2015年8月31日までの期間に当院にPCPで入院した自己免疫性疾患7例(男性2例,女性5例)で,平均年齢は72歳,基礎疾患は関節リウマチが6例で顕微鏡的多発血管炎が1例だった.PCPの治療には,trimethoprim換算で平均9.6 mg/kg/日(5.1-12.5)の中等量のST合剤が使用されていた.副作用としては低Na血症5例(71.4%),皮疹4例(57.1%),血小板減少を2例(28.6%),さらに血清クレアチニン値(Cr)の上昇,血圧上昇,全身倦怠感,高K血症を1例ずつ認めた.副作用により,6例(85.7%)でST合剤が休薬された.副作用改善後,脱感作療法によりST合剤が再投与され,最終的に4例(57.1%)でST合剤による治療が継続できた.予後は良好で,全例が治癒・軽快し対象患者に入院60日以内の死亡例は無かった.自己免疫性疾患に合併したPCPに対する中等量のST合剤による治療は,高用量のST合剤と同等の治療効果を得られる可能性があり,今後の症例の蓄積が望まれる.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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