日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム3-3 ある医師主導治験の道のり:8年間のわが闘争
中田 光
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2016 年 39 巻 4 号 p. 299

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抄録

  リンパ脈管筋腫症(LAM)は妊娠可能な女性が罹患し,LAM細胞と呼ばれる由来不明の細胞が肺や腎臓に転移して,肺が破壊される難病である.70%が気胸を経験し,36%が在宅酸素療法を受けている.TSC1あるいはTSC2という癌抑制遺伝子の変異によることが解明されて以来,mTOR阻害剤であるシロリムスが治療薬として有望視され,2006-10年に日米加3カ国共同のMILES試験で有効性と安全性が検証された.しかし,製造販売元の米国ファイザー社では,同薬の特許有効期間がほとんど残されていないことから,LAMに対するシロリムスの適用拡大をFDAに申請しなかった.MLLES試験の日本人データで承認を取るという可能性も話しあわれたが,日本人の実薬患者が13名と少なかったため,PMDAは安全性を主要評価項目とする医師主導治験の実施を勧め,我々は,ファイザー株式会社より治験薬の供与を受け,ライセンスアウト先企業のノーベルファーマ社と協力し,医師主導治験を実施した.全国9施設のデータを新潟大学に集め,治験調整事務局を置いた.平成25年10月にノーベルファーマ社より薬事承認申請がなされ,26年2月にPMDAによるGCP適合性調査が新潟大学と近畿中央胸部疾患センターに対して行われた.12ヶ月中間報告書を26年3月にPMDAに提出した.5月26日に厚生労働省医薬品第二部会で承認,同7月4日に薬事承認となった.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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