日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディー2-3 マクロファージ・樹状細胞 腫瘍会合性マクロファージ・樹状細胞:担がん宿主内動態と治療への応用
上羽 悟史松島 綱治
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2016 年 39 巻 4 号 p. 321

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抄録

  T細胞の活性化を制御する“免疫チェックポイント”の解明は,抗CTLA4抗体や抗PD-1/PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤によるがん治療という,免疫学における一つの到達点をもたらした.腫瘍組織に浸潤する樹状細胞やマクロファージは,腫瘍特異的CD8+ T細胞応答の誘導・維持に中心的な役割を果たす一方,PD-L1などの免疫チェックポイント分子を介してこれを抑制する2面性を持つ.免疫チェックポイント阻害剤により選択的に抑制経路を阻害することが可能になった今日,樹状細胞やマクロファージの動態や機能への介入を併用することで,相乗的に腫瘍特異的CD8+ T細胞応答を増強する強力な抗腫瘍免疫療法に繋がる可能性がある.樹状細胞,マクロファージは,いずれも腫瘍組織では増殖せず,血液循環を介して持続的に骨髄から供給される前駆細胞により維持されている.例えば,マクロファージの前駆細胞である単球は,ケモカイン受容体CCR2依存的に骨髄から末梢血へ移行した後,同じくCCR2依存的に腫瘍組織に浸潤し,マクロファージへと分化する.一方,腫瘍組織で分化・成熟した樹状細胞は,CCR7依存的に所属リンパ節へ遊走し,T細胞へ抗原提示する.本講演では,主にマウスモデルで得られた知見を中心に,マクロファージ・樹状細胞の担がん宿主内動態とケモカインシステムによる制御を概説し,治療への応用可能性について議論する.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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