日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディー3-1 T細胞 T細胞免疫寛容と自己免疫疾患
松本 満
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2016 年 39 巻 4 号 p. 323

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抄録

  自己免疫疾患は胸腺における中枢性トレランス(central tolerance),あるいは末梢性トレランス(peripheral tolerance)の機能不全によってT細胞の免疫寛容が失われる結果,発症すると考えられる.この内,胸腺における中枢性トレランスの破綻モデルとして,胸腺髄質上皮細胞に発現するAIRE遺伝子の欠損症はT細胞免疫寛容の確立における胸腺髄質上皮細胞の役割,ならびにその機能喪失による自己免疫疾患の病態解明に重要な情報をもたらした.また,末梢性トレランス(peripheral tolerance)の破綻モデルについても,FoxP3遺伝子の機能障害によってもたらされる制御性T細胞の異常による自己免疫疾患の研究が重要な知見をもたらした.前者はrecessive tolerance(負の選択),後者はdominant toleranceの破綻によって自己免疫疾患が発症することを明快に示した例である.このように,T細胞免疫寛容の研究には,実際にヒトにおいて自己免疫疾患の発症をもたらす原因遺伝子の同定が鍵となり,それに続く分子生物学的アプローチによって急速な理解がもたらされつつある.すなわち,原因遺伝子の同定と分子生物学アプローチの協調によって,ヒトの病気の研究においても真の「実験医学」が可能になったと言える.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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