日本臨床免疫学会会誌
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ビギナーズセミナー
ビギナーズセミナー1 多発性硬化症,視神経脊髄炎の新規治療法
宮﨑 雄生
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2016 年 39 巻 4 号 p. 332

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抄録

  多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)は中枢神経の慢性炎症性脱髄性疾患であり,中枢神経症状の再発と寛解を繰り返す.患者サンプルの解析,実験的自己免疫性脳脊髄炎との類似性,免疫抑制作用を有する薬剤がMSの再発を抑制することなどから,MSの病態において,中枢神経抗原に対する自己免疫反応が大きな役割を果たすことは明らかである.一方で,一部の患者では再発がないにもかかわらず神経障害が進行する病像を呈する.この進行型MSに対して既存の免疫調節薬は無効であり,中枢神経内に隔絶された免疫細胞とグリア細胞による特異な神経炎症が根底に存在することが明らかとなりつつある.近年ではこの神経炎症を標的とした進行型MS治療や,神経保護治療,再髄鞘化治療の開発が急ピッチで進められている.視神経脊髄炎(neuromyelitis optica: NMO)は視神経と脊髄に病変が限局したMSの一亜型であると考えられていたが,近年ではアストログリア抗原(aquaporin 4)に対する自己抗体が関与した,MSとは病態の異なる疾患であると理解されている.現在NMOの治療は血漿交換やステロイド,免疫抑制薬が主体であるが,研究が進むに従ってよりその病態に即した治療法が開発されつつある.本セミナーではMSとNMOの病態を概説し,その相違点に触れつつ現在の治療法と,開発中の治療について解説する.

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