日本臨床免疫学会会誌
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第44回総会ポスター賞受賞記念論文
iPS細胞を用いた自己免疫疾患研究
夏本 文輝庄田 宏文藤尾 圭志大津 真山本 一彦
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2017 年 40 巻 1 号 p. 48-53

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抄録

  多能性幹細胞は無限の自己増殖能と個体を形成するすべての細胞種へ分化可能な多分化能を有する幹細胞である.人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いることで,ヒト胚性幹細胞(ES細胞)に関連する倫理的な問題点を克服し,多能性幹細胞を用いた難治性疾患の病態解析や治療薬開発への応用が可能となった.iPS細胞から分化させた細胞によるin vitroにおける疾患モデルは,治療や環境因子に影響されない経時的解析が可能であり,また容易に採取不能な細胞を反復して実験可能となり,ヒト患者由来細胞における多様な研究を可能としている.単一遺伝子の異常による疾患におけるiPS細胞研究は行われているが,著者らは多因子疾患である自己免疫疾患の病態解明へのiPS細胞を用いたアプローチを検討している.著者らは全身性エリテマトーデス(SLE)姉妹例末梢血からiPS細胞を樹立した.そして樹状細胞へ分化誘導することによってSLEのin vitroの疾患モデルの作製を試みた.今後のゲノム,エピゲノム解析と組み合わせることで,SLE病態の再現と解明,創薬研究への応用を目標としている.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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