重症複合免疫不全症(severe combined immunodeficiency: SCID)はリンパ球の分化障害を主たる原因として,乳児期早期に重症感染症で発症し,根治的療法が行われないと生後1年以内に致死的となる原発性免疫不全症(primary immunodeficiency disease: PID)であり,発症頻度は約5万人に1人である.1950年代に発見され,致死的疾患とされていたが,1968年に骨髄移植が行われ,PIDが造血細胞移植によって治癒しうることが示された.さらに1972年にSCIDの一部がアデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase: ADA)変異によって発症することが報告され,1993年にSCIDの約半数を占めるX連鎖SCIDの原因遺伝子が共通γ鎖であることが同定され,SCIDの病態の理解が進み,現在まで20くらいの原因遺伝子が同定されている.SCIDは造血細胞移植によって治癒しうるが,感染症を合併していると移植成績は不良であり,いかに感染症罹患前に診断できるかが問題となっていた.T細胞が遺伝子再構成される際にT-cell receptor excision circles(TRECs)と呼ばれる環状DNAが産生されるが,リアルタイムPCR法を利用すればガスリー血のような少量のDNAからもTRECs定量が可能である.新生児マススクリーニングが可能となり,すでに全米のほとんどの州で行われている.わが国のSCID患者の予後改善のためにも広く新生児マススクリーニングが行われることを望みたい.