日本臨床免疫学会会誌
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ポリオウイルス感染とポリオウイルスレセプター
青木 淳賢小池 智野本 明男
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1994 年 17 巻 6 号 p. 767-771

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抄録
ポリオウイルスは種特異的(ヒトおよびサル)に,組織特異的(脳,脊髄)に感染する.本研究では,この個体レベルの現象がどこまでポリオウイルスレセプター(PVR)という分子で説明できるか検討した.ポリオウイルスに感受性のないマウス由来の細胞株にPVRを導入した細胞やPVRトランスジェニックマウスはポリオウイルス感受性となった.このことはPVRがポリオウイルスの種特異性を決定する因子であることを示している.一方,中枢内ではPVRは脊髄前角の運動神経など,神経細胞に発現していた.ヒト,サルの感染データからポリオウイルスの主要なターゲット細胞の1つは前角運動神経細胞であることから中枢内でのウイルス複製部位はPVRの発現によって決められていることが強く示唆された.ところが,PVR分子の分布を個体全体で調べてみるとPVRは中枢だけでなく調べたかぎりすべての臓器で発現していることが明きらかとなった.さらに,各臓器のホモジェネートはウイルス吸収活性があること,35Sメチオニン標識したポリオウイルスはPVRトランスジェニックマウスに静注すると個体全体に分布することがわかった.これらの事実は通常ポリオウイルスに複製が観察されない中枢以外の臓器でもウイルスは各臓器の細胞表面までにはたどりついていること,すなわち各臓器でウイルス感染がないことはウイルスが各臓器にレセプターを介して吸着した後のステップに何らかの欠陥があるからであると考えられた.
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