抄録
私達はflow cytometry法でアポトーシス制御因子である細胞内bcl-2蛋白の末梢リンパ球での発現を定量的に測定し,検体採取後の経時的な変化を含めて,いくつかの基礎的な検討を行うとともに,活性化刺激に伴うbcl-2量の変化や,その変動がアポトーシスにおよぼす効果などについて検討を加えた.
6時間以上4°Cで検体を保存した場合には,大部分のリンパ球サブセットのbcl-2の平均蛍光強度(MFI)が低下を示した.一方,検体採取後,直ちに細胞表面抗原を一次抗体で染色し, paraformaldehydeで固定操作を行った後に4°Cで検体を保存した場合には,細胞表面抗原や細胞内bcl-2のMFIのいずれにも変動をきたさないことを見いだした.
末梢血単核球にCon-Aを添加培養した場合にはCD 4+, CD 8+, CD 19+, 特にFas+細胞サブセットの百分率と,それらのbcl-2のMFIは共に有意の高値を示した.
末梢リンパ球にrIL-2 (100U/ml)を添加培養し, propidium iodideによる核染色を行ってアポトーシスをflow cytometryで測定するとともに,細胞内bcl-2の経時的変化を測定した. rIL-2非添加群とくらべて,添加群ではbcl-2のMFIの低下は有意に抑制され,同時にこれらリンパ球のアポトーシスが抑制される傾向を示した.