抄録
γδ細胞はT細胞表面にγδ鎖から成るT細胞レセプター(TCR)を表出しているものをいい, αβ鎖TCRを持っ胸腺由来のαβ細胞とは機能的に異なっている. γδ細胞は肝類洞で分化し,宿主の抗腫瘍免疫の一端を担っていると言われている.我々は肝動脈塞栓療法(TAE)によって引き起こされる肝類洞機能の障害に伴う末梢血γδ細胞の動態について検討するため,肝細胞癌患者に対してTAE施行前後で末梢血中のαβ細胞とγδ細胞の変動を観察した.その結果, TAEの施行によりαβ細胞数には有意な変化がなく, γδ細胞数およびγδ細胞のT細胞に対する比率がTAE後3週間有意に減少することが判明した. TAE後のγδ細胞減少はTAEによって肝類洞が障害を受けることによって起こるものと推察された. TAEによりγδ細胞が減少することでTAEが宿主の抗腫瘍免疫能の一端を抑制する可能性が考えられる.