抄録
HIV-1の主な標的細胞群はヘルパーT (Th)細胞群であるが,これらの細胞群はその産生するサイトカインのパターンから, Th 1, Th 2ならびにTh 0細胞に大別されることが知られている.感染初期に分離されるマクロファージ指向性(M-tropic) HIV-1はTh 1細胞培養系において,また病状の進行とともに分離されるT細胞株指向性(T-tropic) HIV-1はTh 2細胞培養系において,それぞれ増殖性が高いことを明らかにしてきた.ウイルスの増殖性の決定領域はgp 120のV 3領域のみにあることがキメラウイルスの解析から明らかになった.発病前の感染者においては, Th 1型の免疫応答細胞が優位にあるが,病状の進行につれてTh 2型免疫応答細胞が優位になってくるという臨床免疫学的検討からの報告を考慮すると,今回の結果は,体内でのサイトカインまたはTh細胞サブセットの変動が,ウイルスの変異を促進しうる大きな要因であると考えられる.