日本臨床免疫学会会誌
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唾液によるエイズウイルスの感染抑制
熊谷 エツ子宋 薇
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2001 年 24 巻 4 号 p. 152-159

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抄録
HIV-1非感染者の全唾液の抗HIV作用を調べた. Na値が20mEq/l未満の唾液では,急速にHIV-1IIIB持続感染MOLT4細胞を傷害し, IIIB株のMAGI/CCR5細胞への感染をほとんど抑制した. Na値が23mEq/l以上の唾液では細胞傷害は極めて低いが, HIVのcell-to-cell伝播を50%以上抑制した.遊離IIIB株と唾液をインキュベート後0.45μmフィルターで濾過すると, MAGI/CCR5細胞への感染がほとんど抑制された.またSLPIなどの可溶性因子による抗HIV作用が若干みられた.一方, MAGI/CCR5細胞を唾液で前処理後IIIB株を感染させると,感染率は高くなる傾向を示した.以上のことから, HIV-1非感染者の全唾液は,宿主細胞というよりも, HIV感染細胞および遊離HIVに作用していることが示唆される.また全唾液の最も重要な抗HIV作用として,唾液の粘性により遊離HIVが包み込まれ,嚥下されることが考えられる.
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© 日本臨床免疫学会
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