日本臨床免疫学会会誌
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強皮症様病態を呈したparaneoplastic syndromeの1例
山本 元久鈴木 知佐子苗代 康可築田 浩幸村上 理絵子山本 博幸高橋 裕樹今井 浩三
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2003 年 26 巻 5 号 p. 293-298

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抄録
65才女性,主婦. 2000年4月より,関節痛,手指のこわばりおよび冷感が出現し,同年12月に当科入院となったが,この期間に急速に皮膚硬化が進行,またRaynaud現象も出現し, nailfold bleedingも認められるようになった.同年10月のmodified Rodnan total skin thickness score(m-Rodnan TTS)は4点だったが,2か月間で16点にまで上昇した.皮膚生検の所見とあわせて,この時点では強皮症の診断したが,間質性肺炎などの臓器障害は認められなかった.検診目的に婦人科受診し,子宮頸癌を指摘された. 2001年3月に子宮全摘出術を施行したところ,皮膚硬化の進行はほぼ停止した.本症例は,今までリウマチ性疾患の既往もなく,強皮症様病態が出現して極めて短期間のうちにm-Rodnan TTSが上昇し,子宮頸癌摘出,放射線化学療法施行後に,症状の進行の遅延が認められたこと,間質性肺炎などの臓器障害を伴っていないことなど,典型的な強皮症とは異なる経過を呈した.以上より,強皮症様病態と子宮頸癌の合併を偶然ではなくparaneoplastic syndromeと考えた.その病態形成には免疫組織学的な検討から, TGF-βの関与は乏しく, CTGFが深く関与している可能性が示唆された.
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