抄録
肺高血圧症,肺線維症,シェーグレン症候群,橋本病を合併したMCTDの一例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は39歳女性で, 15年前に関節痛を主訴とし他院受診し慢性関節リウマチと診断された,その後レイノー現象,眼球・口腔内乾燥感が出現した. 2年前,心雑音を指摘され,心臓カテーテル検査の結果,肺高血圧症と肺動脈弁閉鎖不全と診断された. 1985年7月,労作時呼吸困難と咳嗽を主訴とし,当院へ入院となった.入院時,血圧120/58mmHg,脈拍72/分整であり,多発性関節痛とVelcroラ音,心雑音が認められた.関節の変形や,皮膚症状は認められなかった.検査所見では,血沈亢進,高γ-グロブリン血症, CRP (-), RA (-),抗RNP抗体256倍以上,抗Sm抗体(-),抗SS-A抗体256倍以上,サイロイドテスト25,600倍,マイクロゾームテスト102,400倍, % DLco 42.7%であり,肺生検では,肺線維症と軽度の肺動脈壁の肥厚が認められた.以上より肺高血圧症,肺線維症,シェーグレン症候群,橋本病を合併したMCTDと診断された.その後,プレドニゾロン30mg/日,プラゾシン4.5mg/日の投与により自覚症状は軽快し, % DLcoも90.4%と著しく改善した.
MCTDは比較的予後が良いとされているが,肺高血圧症を合併したMCTDの予後は一般に良好ではない.本例ではプレドニゾロンとプラゾシンの併用療法が奏効し,肺高血圧症を合併したMCTDに対して,有効な治療法の1つと思われた.またわれわれが検索し得た限りでは,本例のような多彩な合併症を伴ったMCTD症例は,認められない.