主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
アトピ-性皮膚炎{AD}を症候群としてとらえる考え方が提唱されアレルギー機序(Extrinsic)と非アレルギー機序(Intrinsic)による病態の存在が認知されるようになりつつある。気管支喘息、アレルギー性鼻炎などのアトピー疾患も含め、今後診断、治療の考え方に大きな影響を与えることが予想される。ADの場合アレルギーの立場からはIgE / IL4 / IL5が関与するI型即時アレルギーないし、LPR, VLPRの解析と平行して、Th2ケモカインのTARCやMDCなどの血清レベルがAD単独群の重症度と相関するという報告がなされ、その産生細胞や病態との関連性が検討されている。さらに最近IL2ファミリーに属するTSLPと呼ばれる新規サイトカインがAD病変部ケラチノサイトで強く発現していることが報告された。TSLPは皮膚ケラチノサイトや肺線維芽細胞などのストローマ細胞より特異的に産生されることが明らかにされ喘息の発症にも関与することが報告されている。非アレルギー性の機序としては,自然免疫に関与する抗菌ペプチドがAD病変部で発現低下が見られること、ブドウ球菌由来SpAによりIL18のケラチノサイトからの産生誘導とIgEの産生増強が見られることが報告されている。痒みのメカニズムの新しい知見として、肥満細胞由来のヒスタミンに加え、トリプターゼにより活性化されるPAR2受容体の役割が明らかにされた。また皮膚バリア機能を担うフィラグリン遺伝子の遺伝多形が喘息を合併するADの発症、進展に関与することが報告され、人種間での変異部位の異同が検討されている。バリア機能異常は皮膚過敏性、痒み感覚の異常などと密接に関与するのみでなく、アレルゲンの侵入を介してIntrinsicからExtrinsicタイプへの移行に大きな役割を果たしていると考えられ、その制御が重要となる。このような考え方は喘息、鼻炎にも共通する点があると考えられ、異分野間での論議が要求される。