主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
「目的」近年、各種の癌にてHLA class I発現の低下と予後との相関性が報告されている。今回我々は、乳癌組織におけるHLA class I発現低下と臨床的背景、予後との関連性について検討した。 「方法」1997年~2000年において施行された乳癌162症例の手術摘出標本に対して、ホルマリン固定標本の免疫染色に適したpan-HLA class I抗体EMR8.5を用いて免疫染色し、HLA class I発現を陽性、低下、陰性の3段階に分類し、臨床病理学的検討を行った。 「結果」全症例中で発現低下と陰性症例合わせると約80%に達した。全症例を対象とした場合、臨床的背景や患者予後との間に統計学的に有意な相関性は認められなかったが、臨床病期が上がるにつれ陰性率は高くなる傾向があった。また、stage IIIに限って再発率を比較すると、HLAの発現低下および陰性症例で有意に再発率が高くなることが判明した。 「結語」乳癌においても、他の癌種と同様にHLA class Iの発現低下は予後不良とあると考えられた。