日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: S4-2
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シンポジウム4 特異抗原をターゲットとしたImmunotherapy
MucoRice:コメ発現システムを応用した経口ワクチン開発
*清野 宏
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キーワード: 粘膜免疫
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抄録

ボーダレス化、グローバル化していく状況は、我々が新興・再興感染症の驚異に常に曝される結果を生んでいる。その対策に向けた一つの大きな柱として、粘膜免疫システムを駆使した次世代ワクチン開発が期待されている。宿主に必須な生理的機能を果たす呼吸器、消化器に代表される組織・臓器は、常に外部環境に直接暴露され病原微生物の侵入経路であり、この表面を覆う粘膜には柔軟かつダイナミックな「粘膜免疫機構」が存在している。粘液と上皮細胞層による物理的バリア、そして、抗菌分子・ペプチド・TLR・NODなど豊富な自然免疫関連分子・物質を用いた粘膜面特有な物理的・化学的・生物的・免疫的バリアを構築している。さらに、腸管・呼吸器粘膜面に存在するパイエル板、鼻咽頭関連リンパ組織(NALT)は、抗原取り込み細胞として知られているM細胞が高頻度で存在するFAEと呼ばれる特殊な上皮細胞層に覆われており、獲得免疫誘導の場として存在している。このM細胞を起点とする巧妙なMALTを介した汎共通粘膜免疫誘導システム(CMIS)を作動させることで、感染防御に必要な抗原特異的分泌型IgAや傷害性T細胞の誘導・制御を行っている。つまり、粘膜免疫機構はユニークな自然免疫・獲得免疫を駆使して外界と対峙する第一線のバリアを形成している。粘膜免疫誘導ネットワークを駆使・応用したワクチン投与は全身系にも効果的に抗原特異的免疫応答を惹起することから、粘膜ワクチンは生体免疫系が有している二段階構えの防御システムを効果的に作動させる事が出来る。この巧妙かつダイナミックな粘膜免疫システムを基盤としたワクチン開発が新規の感染症予防・対策戦略に結びつけていく事が重要である。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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