日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: W4-3
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ワークショップ4 疾患モデル動物を用いた病態解析と治療への展望
多発性硬化症モデルマウス(EAE)におけるIL-6 レセプター阻害療法の検討
*世良田 聡藤本 穣三原 昌彦大杉 義征中川 れい子野村 慎太郎岸本 忠三仲 哲治
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キーワード: IL-6, Th17, MS, MR16-1
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抄録

多発性硬化症(Multiple Sclerosis: MS)は寛解と再発を繰り返す中枢神経系の自己免疫性脱髄性疾患であるが、原因不明であり効果的な治療法が存在しない。近年IL-17を産生するTh17と呼ばれる炎症性CD4 T細胞が、MSのモデルマウスであるexperimental autoimmune encephalomyelitis (EAE)の発症に関与している事が明らかにされ、注目を集めている。また、Th17の分化にはin vitroでIL-6とTGF-betaの刺激が必要である事が明らかにされた。しかし、EAE等の疾患モデルマウスとTh17との関係およびvivoにおけるTh17とIL-6との関係についての詳細は未だ明らかではない。また、モデルマウスから得られた知見はMSなどのヒトの自己免疫疾患におけるTh17を標的とした抗体治療法の開発に有用であると考えられる。
前述した背景をふまえ、今回、我々はEAE発症におけるanti-IL-6R antibody (MR16-1)投与の効果を検討した。EAE はC57BL/6マウスにMyelin oligodendrocyte glycoprotein peptideを免疫して発症させた。免疫初日にMR16-1を投与した結果、Rat IgG投与群に比べ著明にEAEのClinical scoreが抑制された。Presymptomatic stageでのリンパ節におけるTh17の分化の程度をFACSで解析した結果、Rat IgG投与群と比較してMR16-1投与群では分化が抑制されていた。また、Peak stageではRat IgG投与群の脊髄にリンパ球が浸潤している事がHE染色と細胞内サイトカイン染色から確認されたが、MR16-1投与群では脊髄へのリンパ球の浸潤が抑制されており、Th17も検出されなかった。
これらの結果は、EAE発症に関与するTh17分化においてIL-6が必須である事、さらに、MR16-1投与がEAE発症予防に有効である事を示しており、MS治療におけるIL-6R中和抗体療法の有用性を示唆するものと考えられる。今後、我々はEAEにおけるMR16-1の治療効果についてさらに解析すると同時に、臨床応用について検討する予定である。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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