主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
[目的] 網膜剥離は罹患率の高い眼疾患で、視細胞のアポトーシスが視力障害の原因となる。しかし、その機序は殆ど分かっていない。一方、網膜剥離患者の眼内で炎症性サイトカイン、ケモカインが増加していると報告されている。本研究では、視細胞変性と炎症性サイトカイン、ケモカインの因果関係を調べた。
[方法] 成体マウスに網膜剥離を誘導し、サイトカインの発現変化をRT-PCR、ELISA、免疫染色にて調べた。MCP-1中和抗体とノックアウトマウスを使用し、TUNEL法でMCP-1抑制の細胞死に対する効果を評価した。
[結果] 網膜剥離によりIL-1beta、TNFalpha、MCP-1、bFGFが増加し、特にMCP-1は100倍近い増加を示した。MCP-1を抑制すると著明に網膜剥離による視細胞死が抑制された。MCP-1は網膜グリア細胞の一つである、ミューラー細胞に発現し、CD11b陽性白血球(マクロファージやマイクログリア)を眼内に遊走させ、活性化されたCD11b陽性白血球が、活性酸素を介して視細胞を障害していることが明らかとなった。
[結論] マウスの網膜剥離による視細胞変性には、グリア細胞と白血球の相互作用が重要であることが示唆された。また、白血球の遊走に関わるケモカインMCP-1や活性酸素の抑制は、網膜剥離の視細胞変性に新規の神経保護治療となる可能性がある。