主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
目的: BXSBマウスは、全身性エリテマトーデス(SLE)類似の自己免疫疾患の発症に伴い末梢血において単球増加と単球サブセットの変化が生じる。Linらは、刺激性(FcγRIとFcγRIII)と抑制性のIgG Fcレセプター(FcγRIIB)が自己免疫疾患の発症とその抑制に重要であることを報告している(J. Immunol.2006)。今回我々は、刺激性IgG Fcレセプターを欠くBXSBγ鎖欠損マウス(BXSB.γ-/-)と抑制性IgG FcレセプターがB6由来であるBXSBマウス(BXSB.IIBB6/B6)における末梢血での単球増加と単球サブセットの変化について解析した。 方法: 末梢血中の単球と単球サブセットについてF4/80、CD11b、CD11c、Gr-1(Ly6C/G)の各モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーで解析した。 結果: 8ヶ月齢における末梢血中の単球は、BXSBマウスは42.3±7.8%と著明な単球増加を示したのに対して、BXSB.γ-/-マウスで18.4の±6.3%、BXSB.IIBB6/B6マウスは18.3±3.5%と明らかな単球増加抑制を認めた。定常性“resident”単球と呼ばれるCD11b+ Gr-1-と炎症性“inflammatory”単球と呼ばれるCD11b+ Gr-1+単球について解析したところ、加齢BXSBマウスにおいて認められる、CD11b+ Gr-1-の増加は、BXSB.γ-/-マウスおよび、BXSB.IIBB6/B6マウスでは著明に抑制されていた。 結論: SLEのモデルマウスの一つであるBXSBマウスにおいて、その病態を抑制する2系統の変異マウスであるBXSB.γ-/-マウスおよびBXSB.IIBB6/B6マウスでは、末梢血の単球増加、特にCD11b+ Gr-1-のサブセットの増加が有意に抑制されており、BXSBマウスの病態におけるIgG Fcレセプターの関与の重要性が示唆された。