抄録
[症例] 64歳、女性。[現病歴・経過] 2005年、下肢の皮疹出現。同年2月、呼吸困難を自覚したため近医を受診。間質性肺炎を指摘され4月当院紹介受診。下肢の皮斑、末梢神経障害あり、胸部CTでは気管支肺炎合併の多発嚢胞性間質性肺炎の像を呈し、MPO-ANCA陽性(73 U/ml)よりANCA関連血管炎と診断。炎症反応低値であり、クラリスロマイシン少量投与を開始、CRPは陰性化した。その後、MPO-ANCAは60~100 U/mlを推移し、KL-6は700から1300 U/mlと上昇、肺野の嚢胞性変化は増大傾向にあった。2006年5月にはニューモシスチス肺炎を併発、ST合剤に加えステロイドパルス療法施行、後療法はプレドニゾロン(PSL)40mg/dayとして改善。2週間でPSL10mg/dayまで漸減した。以後、MPO-ANCAは陰性化したがKL-6は3000U/mlまで漸増。肺の線維化、嚢胞性変化は進行し、同年11月、呼吸困難増悪のため入院するも改善せず、11月30日永眠された。剖検所見では、新旧の硝子膜形成・気腔内器質化ならびに多発性肺嚢胞を伴う肺線維症、即ちびまん性肺胞傷害+通常型間質性肺炎を認めた。[考察] MPO-ANCA関連血管炎における両病変合併の報告は稀である。本例はCRP・MPO-ANCA陰性化後も肺病変の進行を認めており、本症の間質性肺炎の病態・治療を考える上で貴重と思われ報告する。