日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第36回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: S3-3
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新しいタイプのヒト制御性T細胞(HOZOT)の発見と臨床応用
*中村 修治
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抄録

ヒトの臍帯血の細胞をマウスのストローマ(間質)細胞と共培養することにより従来知られていなかった種類のT細胞が誘導されることが明らかになった。HOZOTと命名されたこのT細胞は抗がん作用と免疫抑制作用を同時にもつことから機能や分化への興味とともに臨床的な応用が期待される。 HOZOTはヒト臍帯血の単核球細胞をマウスストローマと共培養することで誘導されてきた。この誘導法は未精製画分を用いること、IL-2など増殖因子は加えないこと、抗原提示能の弱いと考えられるストローマを用いることなどの特徴を持つ。誘導されたHOZOTはCD4+CD8+のダブルポジティブの表現形を示す点で従来の成熟T細胞と異なっており、さらにFOXP3+、CD25high、GITR+、CTLA-4+などの表現形、アロMLR抑制機能をもつことから新しいタイプの制御性T細胞として分類した。一方、誘導に際し共培養に用いたストローマに対して傷害活性を示すことから細胞傷害性T細胞の性質もあわせ持つという多機能性のT細胞であった。この細胞傷害活性はマウスに限らずヒトの大腸癌細胞などある種の腫瘍細胞に対しても効果があることが判明した。さらにin vivoマウスモデルにおいても抗腫瘍効果が確認された。また、サイトカイン産生という面からは炎症性サイトカインのIFN-γやRANTESとともに抗炎症性のIL-10が高いレベルで産生されるという特徴を示すT細胞であった。 以上の特徴から、HOZOTはがんの治療や自己免疫疾患、移植免疫への臨床応用の可能性が考えられる。そのための第一歩として末梢血からのHOZOT様細胞の誘導の可能性と効率的で安全な細胞誘導法の確立を検討する必要がある。さらにはマウスモデルの構築による治療効果の検討も必要である。これらについて最近のデータをふくめ報告する。

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© 2008 日本臨床免疫学会
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