日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第36回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: S2-4
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T細胞療法の2つの新たなアプローチ
*西川 博嘉珠玖 洋
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抄録

癌細胞を破壊するCD8+細胞傷害性T細胞 (CTL)が認識する癌抗原ペプチドの発見以来、このような腫瘍抗原をペプチド、タンパクなどで免疫する癌ワクチンの臨床試験が多数行われ、患者生体内で抗原特異的CD8+CTLを誘導できることが見出された。しかし、腫瘍抗原特異的CD8+CTLが誘導されるにも関わらず、これらの臨床試験において未だ満足のいく臨床効果は得られていない。これを克服するため2つの新たなアプローチを行っている。1) 多くの腫瘍抗原が自己抗原由来であることから、腫瘍に対する免疫応答が免疫寛容になっていると考えられている。その一つの機序として、自己抗原を認識し、自己に対する免疫応答を制御する CD4+CD25+制御性T 細胞 (Treg) による免疫抑制があげられる。近年Toll like receptor (TLR)を刺激する細菌の菌体由来成分が、CD4+CD25+Tregの免疫抑制作用を解除することが示された。我々は、サルモネラ菌の特殊な蛋白デリバリーシステム(III型分泌装置)に着目し、癌・精巣抗原NY-ESO-1蛋白をデリバリー可能な弱毒化サルモネラ菌を作製し、がんワクチン療法への応用の可能性を検討した。2) 癌患者の癌組織に浸潤しているリンパ球 (TIL)から、in vitroで腫瘍抗原特異的CTLを大量に誘導し、癌患者に養子免疫する臨床試験で腫瘍退縮が認められ、今後の発展が期待されている。しかしTILから腫瘍抗原特異的CD8+CTLを誘導することを全ての癌患者に適応することは難しい。我々は、HLA-A2402拘束性、腫瘍・精巣抗原MAGE-A4特異的CD8+T細胞クローンを作製し、高親和性T細胞レセプター(TCR)遺伝子を抽出した。レトロウィルスにてTCRを患者末梢血CD8+T細胞に導入し、人工的に腫瘍特異的CD8+CTLを作製後、癌患者に投与する養子免疫療法を現在検討中である。

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© 2008 日本臨床免疫学会
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