日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第37回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: W1-2
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ワークショップ1 ヒト免疫病におけるTh17細胞とTreg細胞
ヒト炎症性腸疾患において重要なのはTh1かTh17か?
*久松 理一日比 紀文
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キーワード: 腸内細菌, クローン病, Th1, Th17, IL-23
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抄録

Th17細胞が新しいエフェクターT細胞として同定されて以来、多くの自己免疫性疾患や慢性炎症性疾患においてTh17細胞の病態への関与が示唆されるようになり、これまでTh1病と考えられていた疾患でもTh17の関与を示唆するデータが報告されている。しかし、多くの報告はマウス疾患モデルを用いたものであり、ヒト疾患において明らかにTh17の関与が同定されたものは少ない。炎症性腸疾患においても各種腸炎モデルマウスにおいてTh17細胞の病態への関与が示唆されているもののヒト局所で検討した報告は少ない。我々はこれまでにクローン病の腸管局所では機能異常をきたしたCD14+マクロファージが腸内細菌に対して過剰なIL-23を産生し病態に関与することを報告してきた。このCD14+マクロファージから産生されるIL-23は粘膜局所のT細胞やNK細胞からのIFN-g産生を促すが、IL-17の産生には影響しない。実際、クローン病の粘膜局所の環境はIFN-g産生が高いTh1にシフトしていると考えられる。しかしながら、クローン病粘膜固有層内のCD4+T細胞分画にはIL-17を有するTh17細胞が存在しているのも事実である。IL-17自体の産生は認められないものの他のTh17サイトカインであるCCL20などが病態に関与している可能性は否定できない。さらにTh17細胞からのIFN-g産生の可能性も否定はできずTh17-Th1のplasticityという概念も含めて局所でのTh1とTh17の制御の解明は今後の課題である。少なくともこれまでの我々の検討からはクローン病腸管局所においてIL-17の重要性を示すデータは得られておらず、IL-23 – IFN-g axisが病態形成の中心にあると思われる。

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© 2009 日本臨床免疫学会
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