主催: 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 疾患制御医学専攻 臨床免疫学
【目的】シェーグレン症候群(SS)患者において、抗M3ムスカリン作働性アセチルコリン受容体(M3R)抗体のエピトープと機能を明らかにする。 【方法】1)ヒトM3Rの4つの細胞外領域(N末端、第1、2、3細胞外ループ)の合成ペプチドを抗原として、SS42例、健常人(HC)42例の血清中抗M3R抗体価をELISAで測定した。2)ヒト唾液腺上皮(HSG)細胞株を抗M3R抗体陽性SS、陰性SS、HCのIgGと12時間共培養後,塩酸セビメリンで刺激し、HSG細胞内Ca濃度変化を測定した。 【結果】1)N末端を認識する抗M3R抗体はSSの42.9%(18/42)、HCの4.8%(2/42)で陽性であった。第1細胞外ループはそれぞれ47.6%(20/42)、7.1%(3/42)、第2はそれぞれ54.8%(23/42)、2.4%(1/42)、第3はそれぞれ45.2%(19/42)、2.4%(1/42)であった。 2)第2細胞外ループに対する抗M3R抗体陽性SSのIgGは、HCのIgGと比較して、セビメリン刺激後のCa濃度上昇を有意に抑制した。N末端および第1細胞外ループはCa濃度上昇を増強、第3細胞外ループはCa濃度上昇に影響しなかった。 【結論】抗M3R抗体は複数のエピトープを有し、M3Rを介する唾液分泌に影響する可能性が示唆された。唾液分泌への影響は、B細胞エピトープにより異なる可能性が示された。