抄録
粘膜免疫システムは、病原微生物と共生微生物に対しては全く相反する積極的排除(又は活性)と無視無応答(又は抑制)を惹起し免疫学的恒常性を維持している。その中核的役割を果たしている腸管関連リンパ組織(GALT)、咽頭関連リンパ組織(NALT)、涙管関連リンパ組織(TALT)では、その組織形成誘導細胞の特徴や組織形成関連分子依存性などに関して異なり、粘膜免疫の多様性が垣間見られる。腸管では、共生細菌に代表される外部環境と粘膜系自然・獲得免疫による内部環境の間に上皮細胞層が存在し、その三者間での免疫生物学的相互作用が、健常時から炎症時、寛解時に至る過程において作動している。当研究室では、「腸内共生細菌、上皮細胞、腸管免疫系細胞」の三者間相互作用を分子、細胞、個体レベルで明らかにすべく検討を進めている。例えば、腸管関連リンパ組織の代表格であるパイエル板内外における細菌プロファイルの精査を行ったところ、パイエル板内には腸内フローラの一部である日和見細菌群が存在し、これらの細菌群に対して宿主免疫系は、抗原特異的IgAに代表される粘膜免疫応答を選択的に誘導し、「組織内共生」という新しい相互依存性関係を構築している事が示唆された。さらに、粘膜系自然免疫系細胞による上皮細胞フコシル化による共生細菌ニッチ制御、粘膜系マスト細胞による炎症制御など新知見を得ており、その成果の一部を紹介する。