臨床薬理
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記録/シンポジウム14:医師主導臨床研究の具体例から研究者と研究組織(ARO)を考える
5.医師主導臨床試験 ―肺癌地域ネットワークを国内そして国際研究へ繋げる―
吉澤 弘久
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2013 年 44 巻 5 号 p. 423-424

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抄録

肺癌に対する先進的な医師主導臨床研究を推進することを目的として,1996年に新潟肺癌治療研究会を設立した.新潟大学医歯学総合病院呼吸器内科・生命科学医療センターを中心とし,県内外の新潟大学呼吸器内科の33関連病院,約90名の呼吸器内科専門医で構成されている.UMINへの試験登録が開始された2008年以降,介入研究では北東日本治療研究グループ(NEJ)等の国内大規模臨床試験12プロトコール,県内の共同研究14プロトコールを実施している.プロトコールの実施上の特性から,新潟大学病院に症例を集中させて実施する形態,上・中・下越の3地域の基幹病院をHUB病院として症例を集積する形態,すべての参加施設で登録可能の3形態に分け実施している.2011 年の県内症例登録総数は144名となっている.肺癌領域における臨床研究ではバイオマーカーの探索,個別化医療の推進が重要なテーマであるが,検体の集積からバイオマーカー解析,治療選択までの煩雑な過程を,大学内に設置した事務局が的確に指示することにより,参加施設からの効率的な症例登録推進を目指している.非小細胞肺癌におけるゲフィチニブと標準的化学療法を比較した大規模比較試験(NEJ002 試験:N Eng J Med, 2010)では,県内施設から多数例の検体を集積し,その解析結果から,上皮成長因子受容体の遺伝子変異を有する症例を短期間に多数例登録することができた.本邦における国内・国際共同研究を積極的に進めるためには,地域ネットワークによる効率的な症例登録システムの確立が重要であると考える.

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© 2013 日本臨床薬理学会
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