抄録
本研究は、低出生体重児のどのような要因が発達の予後に関わるのか、包括的に捉える視点を得ること
を目的としたものである。具体的には、新生児特定集中治療室(NICU)を卒業した児を対象に、出生時
体重を含めた様々な要因と新版K 式発達検査2001 の発達指数(DQ)にどのような関連があるのか定量的
な検討を加えた。その結果、まず出生時体重と各種DQ との間に有意な相関関係はみられないことが明ら
かとなった。また、発達の予後を予測する要因として、退院時体重などといったNICU 在籍時の要因を用
いて行った重回帰分析や多変量回帰分析では、DQ の予測力が低く、NICU 在籍時以外の要因も含めること
の重要性が示唆された。次に、DQ を利用した階層的クラスター分析では、対象児を2 つのクラスターに
分類できることが明らかとなった。これらのクラスターのうち、全てのDQ で定型群よりも有意にその値
が低くなるクラスターでは、定型群よりも認知・適応のDQ が有意に高くなるもう一方のクラスターに比
べて、男児の比率がより多く、在NICU 日数がより長く、そして退院時体重がより重くなっていた。これ
らの結果からは、出生時体重以外の要因、NICU 卒業後に生じる様々な要因も、NICU 卒業児の発達の予
後に影響を及ぼし得るだろうことが示唆された。