天然型アブシシン酸(SABA)の作物生育調節に関する利用試験は, 1980年代に始まり, 1993年頃までの知見については,本誌の総説(禿1994)で紹介した.その後, SABAの実用化研究は,予想外の方向へ進展して, 2004年に肥料の効果発現促進材として実用認可された(肥料登録番号 生第84582号:商品名ミヨビ:表1).その実用場面は,発芽から収穫までの広範な生育現象の向上に有効であり,従来のアブシシン酸の生理作用に関する教科書的な理解を大きく変えるものである.現在,広範な作物での利用普及が進みつつある.その現状について取りまとめた.