抄録
近年の分子遺伝学の目覚ましい発展に伴い,オーキシン(インドール-3-酢酸:IAA)による植物の生長・分化制御機構の解明が急速に進んでいる.これまでIAAは複数の経路から合成されると提唱されてきたが,その中で最も広く植物に存在すると考えられていたインドール-3-ピルビン酸経路の鍵遺伝子がシロイヌナズナから単離された.また,LC-ESI-MS/MSによりこれまで検出が難しかった数種の予想中間体が分析され,イネなどにはないIAA生合成経路がシロイヌナズナに存在することも明らかになってきた.さらに,IAA生合成の調節に関わる転写制御因子も明らかにされてきている.本総説では植物のIAA生合成研究に関する最新の情報を紹介する.
