熱測定
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パイロクロア型酸化物の構造と高温熱物性
山崎 哲松井 恒雄
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1999 年 26 巻 3 号 p. 82-91

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抄録
パイロクロア型構造を持つ酸化物の構造と高温での熱物性について過去の研究例を幾つか取り上げた。パイロクロア型構造は螢石型構造の欠陥構造,あるいは3次元網状構造と鎖状構造のネットワークとして説明され,XAFSによる局所構造解析から螢石型相中に存在するパイロクロア型構造のクラスターモデルが提案されている。また,NdやCeを添加したLa2Zr2O7の局所構造解析から,相の安定性が添加量にしたがって増すことが見出されている。一部のパイロクロア型酸化物に見られる高温での規則-不規則転移は,陽イオンの半径によりその有無や転移温度に違いが現れる。酸素イオン伝導やプロトン伝導を示すパイロクロア型酸化物が知られており,その伝導性を説明する欠陥モデルが考えられている。酸素不定比についての研究からは,高酸素分圧下では格子間酸素が,低酸素分圧下では酸素空孔や陽イオンの還元が支配的な欠陥として存在することが調べられている。高温での熱容量測定例は幾つかあるが,規則-不規則転移による熱容量異常が観察されるまでには至っていない。Ln2Hf2O7(Ln=La,Eu,Gd)で見られるLnによる熱容量の温度依存性の違いは,欠陥生成エンタルピーの違いが原因とも考えられる。熱膨張率の大きさの傾向は酸素位置パラメーターの値にほぼ従うことが確かめられた。絶縁性のパイロクロア型酸化物の熱伝導率の測定結果はフォノン散乱によるものとして説明されるが,金属的な性質を示す化合物では伝導電子による寄与を考えなければならないかもしれない。
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© 日本熱測定学会
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