抄録
等原子比近傍のNiTiの熱弾性型マルテンサイト変態を理解するために,電気抵抗測定を四端子電位差計法によって詳細に実施した。NiTiの相変態挙動はマルテンサイト変態開始温度(Ms)と相変態の繰り返しをともなう熱サイクルに依存する。高いMsのNiTiは一段変態を示し,そのMsは熱サイクル数の増加にともなって減少する。さらに不完全熱サイクル後にはMs付近に電気抵抗の増加が現れ,これはR相の形成に対応している。一方,低いMsのNiTiは二段変態を示す傾向があり,その抵抗のピークは完全熱サイクルによって増加してR相の温度領域が一層拡大する。高温相の電気抵抗は温度に対して非線型であり,このことは広い温度範囲にわたってマルテンサイト変態の前駆現象が広がっていることを意味している。熱サイクルにともなう相変態温度のシフトおよびR相が顕著になることは相変態誘起欠陥の累積に起因し得ると考えられる。