熱測定
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非水系溶液配位化学と滴定カロリメトリー
石黒 慎一小宮 守人
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2001 年 28 巻 3 号 p. 135-143

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抄録

滴定カロリメトリーは非水溶媒系での金属イオンの錯形成の熱力学的パラメータを決定する有力な方法である。これにより,二元錯体のみならず,複雑な三元錯体の溶液内平衡を精密に解析でき,その生成定数とエンタルピーを同時に決定できた。錯体の生成エンタルピーおよびエントロピーは反応に伴う金属イオンの溶媒和数の変化を反映し,生成錯体の配位構造に関して有力な情報を提供する。水溶液系と違って非水溶媒では,バルク溶媒の液体構造性が弱いこと,また,溶媒分子が嵩高く,このため溶媒和の立体効果が働くことが特徴である。その結果,水よりも配位性の強い非プロトン性溶媒中でも,ハロゲン化物イオンのようなアニオン性配位子の金属錯体の生成が強く促進される。これまで得られた結果を,特に溶媒和の立体効果の観点から紹介する。

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