抄録
物性物理学の中心主題の一つをなす相転移とそれに伴う臨界現象において,熱測定が果たす役割は大きい。本稿ではその中で,液晶相転移における臨界熱異常の研究に焦点を当てだ。液晶が示す相は極めて多岐に渡り,相転移および臨界現象について研究するための格好の舞台を提供する。まず代表的ないくつかの液晶相について述べた後,臨界現象の基本について触れ,中でもユニバーサリティの概念を紹介した。液晶についての精密熱測定の手法が開発されたことがこの分野における臨界現象の研究の進展に大きく寄与している。また本稿では異常熱容量の解析方法について,実際的な注意点を含めてやや詳しく述べた。具体的には,臨界定数項および補正項の必要性,データレンジ・シュリンキングなどである。さらに,比較的最近の研究例として,反強誘電性液晶における3次元XY挙動から三重臨界挙動へのクロスオーバについて,ま de Vries型Sm-A-Sm-C相転移についての測定結果を紹介した。