2016 年 20 巻 1 号 p. 59-63
人工心肺中に発症した急性大動脈解離において頸動脈超音波検査(CAU)と経食道心臓超音波検査(TEE)が脳血流の評価に有用であった症例を報告する。
75歳女性,MRに対しMVP/TVP/MAZE術が予定された。上行大動脈へ送血管を挿入後,大動脈遮断を施行し,心内修復を施行後,大動脈遮断解除を行った。
大動脈遮断解除直後,左橈骨動脈圧の低下を伴う,急性大動脈解離が発症した。
CPBの再確立を行うも,CAUおよびTEEで両総頸動脈の血流は偽腔にしか確認できなかったため,右腋窩動脈への送血を追加することで真腔の血流を得た。
上行大動脈置換術施行後に右鎖骨下動脈送血を中止したところ,右総頸動脈血流の低下がCAUで確認されたため,右鎖骨下動脈バイパス術を追加し,十分な脳血流を得ることができた。
脳血流の評価方法は種々存在し,眼窩超音波,CAU,近赤外線分光法,浅側頭動脈圧測定,TEE等が挙げられる。それぞれの利点と欠点を理解するだけでなく,有事の際に,それらを的確に素早く用いて評価できることが極めて重要である。