Cardiovascular Anesthesia
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総説
エビデンスからみた本邦における小児心臓手術周術期管理の実態
木村 聡 深澤 俊貴水野 佳世子川上 浩司江木 盛時
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2025 年 29 巻 1 号 p. 21-35

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抄録

 本研究の目的は,小児心臓手術の周術期管理に焦点を当てたシステマティックレビュー(SR)と Diagnosis Procedure Combination(DPC)データベースを用いた日本国内の現状調査である。はじめに,SR を行い,心血管作動薬,鎮痛・鎮静薬,筋弛緩薬の使用を対象としたランダム化比較試験(RCT)を検索した。次に,本邦の DPC データベースを用いて,2014 年 4 月から 2024 年 3 月の間に心室中隔欠損閉鎖術,ファロー四徴症手術,フォンタン手術,大血管転位症手術,総肺静脈還流異常症手術のいずれかを受けた患者を対象とし,周術期管理について診療実施に関する情報を抽出した。SR によると,手術当日の心血管作動薬を比較した RCT は計 9 本存在し,鎮痛・鎮静薬や筋弛緩薬またはその拮抗薬に関する RCT はそれぞれ 12 本,3 本と限られていた。DPC データベースを用いた調査では,計 38 施設,530 名が対象となった。手術当日の心血管作動薬の使用頻度は,ドパミン 91.7%,ミルリノン 38.1%であった。本邦では,術後の鎮静薬としてはデクスメデトミジンの使用頻度が 73.2%と最も高く,周術期に筋弛緩薬の拮抗薬を投与された患者は 5.7%のみであった。小児心臓手術周術期管理に関する RCT は少なく,本邦における実態調査ではエビデンスによる裏付けの少ない薬剤を使用する傾向や管理の大きな差が存在した。

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© 2025 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会
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