1993 年 12 巻 1-2 号 p. 1-2_37-1-2_44
現在までに多数の白内障研究モデルが開発されているが,ヒト白内障の発生機序は完全には解明されておらず,新たなモデルが必要である。1989年,自家繁殖中のSprague-Dawleyラットに自然発症の白内障を認め,このラットを兄妹交配した結果,遺伝性白内障であることが確認された。開眼時にすでに発症し,小眼症,小水晶体症,眼球突出,虹彩後癒着などを併発するタイプ(早発型)と生後7週齢頃から発症するタイプ(遅発型)の2つの発症様式が認められた。組織学的検査の結果,両タイプともに水晶体上皮細胞の伸長異常が示唆された。交配実験の結果,白内障因子のホモ型で早発型,ヘテロ型で遅発型を発症する不完全優性遺伝である可能性が考えられた。