抄録
眼毒性を評価する試験において、我々は検疫期間中に供試動物を選別するための眼科学的検査を実施している。その際、観察された自然発症性の眼病変のうち、眼底出血について、Fischer系(F344)およびSprague-Dawley系(SD)ラットの症例をまとめたので一部経過も含めて報告する。
5週齢で検査したF344ラットでは、雌雄各249匹中雄5例雌1例で斑点状の眼底出血が、雄1例で火炎状の眼底出血が観察された。斑点状出血の症例のうち、雄4例で出血に伴って帯状の眼底反射の亢進が観察され、さらに、雄2例雌1例では、9ないし13週齢で、び漫性の眼底反射の亢進が認められた。火炎状出血の症例では、10週齢で出血部位に褐色点が認められ、12週齢では褐色点も含めて眼病変は観察されなかった。4週齢で検査したSDラット雌雄各441匹中雌1例で帯状の眼底反射亢進を伴う斑点状の出血が、雄1例で網膜動脈を軸として環状に認められる眼底出血が観察された。環状の眼底出血の症例では、16週齢で眼底出血は認められず、出血部位に限局性の眼底反射の亢進が認められた。び漫性の眼底反射の亢進が観察されたF344ラット2例の病理組織学的検査を11または13週齢で実施し、内顆粒層、内網状層および神経節細胞層の減少あるいは消失が観察された。
今回の結果から、斑点状の眼底出血と眼底反射の亢進との関連性が示唆され、び漫性の眼底反射の亢進を示す症例では、組織学的に内顆粒層より内層の萎縮が観察された。