日本歯科衛生学会雑誌
Online ISSN : 2760-1196
Print ISSN : 1884-5193
ISSN-L : 1884-5193
調査報告
某大学病院における新人看護師の多職種連携口腔ケア研修受講前後の口腔ケアに関する意識調査
中村 次代奥 菜央理岡留 朝子塚本 葉子疋田 春奈菊村 里香山添 淳一井上 良介川野 真太郎
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2026 年 20 巻 2 号 p. 37-44

詳細

【緒 言】

厚生労働省(2024年)によると,肺炎は日本における死因の第5位,誤嚥性肺炎は第6位を占めている1),2)。75歳以上の高齢者における肺炎のうち,7割以上が誤嚥性肺炎であると報告されている1),2),3)。また,気道感染の予防と摂食嚥下機能や構音機能の維持・向上に対する口腔ケア実施の有効性が報告されている4),5),6)。本研究では「口腔ケア」とは歯科医師・歯科衛生士が行う専門的な口腔保健管理に限定せず,病棟において看護師等の他職種が日常的に実施する「お口のお手入れ」「口腔清潔」「口腔清拭」などの基本的な口腔ケア行為を含む広義の概念として用いるものとする。急性期医療の現場においては,外科療法などの周術期や化学療法・放射線治療,あるいは集中治療室管理を要する患者に対し,呼吸器合併症,口腔機能の廃用を予防するため,日々の口腔ケアは不可欠である。病棟看護師が入院患者に対する口腔ケアの重要性や必要性を理解し,適切な口腔ケアを実施することで合併症を予防し,在院日数短縮に貢献でき,患者の退院後の生活機能の維持向上にもつながる7)。特にセルフケアが困難な患者の口腔ケアは病棟看護師にゆだねられる場合がほとんどであるが,入職後に口腔ケアの知識や技術を習得する機会は少ない。また,これまでに口腔ケアの実態や多職種連携にて行う口腔ケアへの関心についての調査報告も少なく,より現場のニーズに応じた口腔ケア研修を企画,運営するためには調査を進める必要があると考えた。当院では,新人看護師を対象とした多職種連携口腔ケア研修を,入職後,毎年一回定期的に実施している。そこで本研究は,新人看護師を対象に,多職種連携による口腔ケア研修の研修前後および実務経験1年後における多職種連携に関する意識や,口腔ケアに関する知識および自信について実態を明らかにすることを目的とし,得られた結果は今後の研修内容に反映させることとした。

【対象および方法】

Ⅰ. 対象

某大学病院において2022年4月に入職した新人看護師で2022年6月に医科歯科連携による口腔ケア研修を受講した121人のうち同意が得られた者を対象とした。

Ⅱ. 調査方法

対象者へ事前配布した無記名自記式質問紙を2022年6月の口腔ケア研修受講前に回収した。口腔ケア研修は121人を4グループに分け,約30人ずつ実施した。摂食嚥下認定看護師より口腔ケアの意義や口腔機能,口腔ケアにおける多職種連携の役割についての講義を15分間実施した。続いて歯科衛生士により口腔ケアの必要物品の事前準備や口腔粘膜を含めた歯肉の状態,歯垢・舌苔・食物残渣の付着状態や唾液・義歯の適合,動揺歯の有無などの口腔内の観察ポイントの説明,さらに口腔粘膜や歯面・歯間部の清掃,保湿の実技に関する講義を10分間実施した。口腔ケア実技演習は30分間とし,摂食嚥下認定看護師が口腔周辺器官シミュレーターMANABOT(株式会社ニッシン,京都)を使用して実施した。はじめに体位調整を行った後,口腔内観察を行い,スポンジブラシの洗い方・絞り方,粘膜の清拭手順やスポンジブラシの力加減を含む口腔粘膜清拭の実技を行った。歯科衛生士は顎模型を使用し,歯ブラシ・タフトブラシ・歯間ブラシ・デンタルフロスを用いた歯面・歯間部の清掃方法ならびに保湿剤の選択や使用方法を含む一連の口腔ケアの実技を実施した。口腔ケア研修受講直後に自記式質問紙を再度配付し,回答を得た。質問紙の記載時間は10分間とし,研修を含めて合計70分間とした。口腔ケア研修受講者が,約1年間の実務経験が経過した時点で再度自記式質問紙を配布し,回答を得た。

Ⅲ. 調査内容

質問項目(図1)のうち,「多職種連携の口腔ケアの活動に関して興味はありますか」「入院患者の口腔ケアにおいて多職種との連携は重要と思いますか」「口腔ケアの一連の流れを説明できますか」「口腔内の観察ポイントを説明できますか」「現時点で,病棟で口腔ケアを実施する自信はありますか」については1~5までの選択式とした。「現在のご自身の口腔ケアの知識,技術は自己採点で何点ぐらいと評価しますか」については記述式とした。研修後と1年間の実務経験後の質問紙にのみ「本講義・演習をとおしての満足度(点)を教えてください」の質問を追加した。「口腔ケア道具の使用について説明できるものはありますか」「入院患者の口腔ケアにはどのような効果があると思いますか。」については複数選択回答可とした。口腔ケアの一連の流れについては,口腔ケアの手順に沿ってできること,口腔内の観察ポイントとして歯・歯肉・口腔粘膜の状態,義歯や口腔乾燥および口腔機能の状態を確認できるかどうかに着目することとした。さらに,口腔ケアを行う自信や自己採点については,本人の現場での実感や経験に基づいて,主観的に判断し回答するよう依頼した。質問紙の作成においては,既報の口腔ケア教育・看護師の口腔ケア認識に関する文献を参考に項目案を作成し,歯科医師・歯科衛生士・看護師の合議で内容妥当性を確認した。

図1

質問紙

Ⅳ. 分析方法

選択式質問項目の研修前,研修後,研修約1年後の3群の単純集計を行った。質問紙は匿名での回答であり,各時点での同一対象者を追跡していない。

Ⅴ. 倫理的配慮

本研究は九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会承認を得て実施した(承認番号:23019-00)。調査対象者に対して本研究の目的,研究協力の任意性と協力辞退の事由,研究方法,個人情報の保護,調査結果の開示について文書にて説明した。質問紙は無記名自記式とし,回答は任意とした。回答の提出をもって同意を得たものとした。

【結 果】

質問紙の回収率は研修前100人(82.6%),研修後121人(100%),1年後112人(92.6%)であった(表1)。「多職種連携の口腔ケアの活動に関して興味はありますか」の質問に対し,とても興味がある・まあまあ興味があるという肯定的回答は,研修前78人(78.0%),研修後116人(95.9%),1年後93人(83.0%)であった。「入院患者の口腔ケアにおいて多職種との連携は重要と思いますか」の質問に対し,とても重要である・まあまあ重要であるという肯定的回答は研修前97人(97.0%),研修後121人(100%),1年後110人(98.2%)であった。「口腔ケアの一連の流れを説明できますか」の質問に対し,十分説明できる・だいたい説明できるという肯定的回答は,研修前42人(42.0%),研修後116人(95.9%),1年後73人(65.2%)であった。「口腔内の観察ポイントを説明できますか」の質問に対し,十分説明できる・だいたい説明できるという肯定的回答は,研修前31人(31.0%),研修後114人(94.2%),1年後86人(76.8%)であった(表1)。「現時点で,病棟で口腔ケアを実施する自信はありますか」の質問に対し,とても自信がある・まあまあ自信があるという肯定的回答は研修前7人(7.0%),研修後86人(71.1%),1年後48人(42.9%)であった。「現在のご自身の口腔ケアの知識・技術は,自己採点で何点ぐらいと評価しますか(0~100点で記載してください)」の質問に対し,研修前42.4±20.9点,研修後67.3±14.3点,1年後61.7±14.8点であった(図2)。「本講義・演習を受講しての満足度を教えてください(0~100点で記載してください)」の質問に対し,研修後92.7±9.0点,1年後83.0±13.0点であった(図3)。「口腔ケアの道具の使用について説明できるものはありますか。(複数回答可)」の質問に対し,「歯ブラシ」は研修前93人(93.0%),研修後121人(100%),1年後110人(98.2%)であった。「歯間ブラシ」は研修前72人(72.0%),研修後120人(99.2%),1年後106人(94.6%)であった。「スポンジブラシ」は研修前73人(73.0%),研修後118人(97.5%),1年後109人(97.3%)であった。「タフトブラシ」は研修前9人(9.0%),研修後106人(87.6%),1年後49人(43.8%)であった。「デンタルフロス」は研修前34人(34.0%),研修後90人(74.4%),1年後70人(62.5%)であった。「保湿剤」は研修前13人(13.0%),研修後97人(80.2%),1年後71人(63.4%)であった(図4)。「入院患者の口腔ケアにはどのような効果があると思いますか。(複数回答可)」の質問に対し「口腔衛生向上・口臭予防」は研修前95人(95.0%),研修後120人(99.2%),1年後110人(98.2%),「う蝕・歯周病の予防」は研修前94人(94.0%),研修後118人(97.5%),1年後108人(96.4%),「口腔・摂食嚥下機能の維持向上」は研修前93人(93.0%),研修後120人(99.2%),1年後101人(90.2%),「入院中の合併症予防」は研修前92人(92.0%),研修後115人(95.0%),1年後104人(92.9%)であり90%以上が選択した。「入院生活の満足度向上」は研修前53人(53.0%),研修後88人(72.7%),1年後67人(59.8%)であった。「食事摂取量向上・栄養状態改善」は研修前69人(69.0%),研修後103人(85.1%),1年後91人(81.3%)であった。「入院期間短縮」は研修前29人(29.0%),研修後53人(43.8%),1年後41人(36.6%)であった。「意識レベル向上」は研修前41人(41.0%),研修後79人(65.3%),1年後60人(53.6%)であった(図5)。

表1

質問紙の回答


図2

口腔ケアの知識、技術の自己採点

図3

口腔ケア研修 講義、演習の満足度

図4

説明できる口腔ケア道具

図5

口腔ケアの効果に対する認識

【考 察】

本調査において「多職種連携の口腔ケアの活動に関して興味はありますか」という問いに対する肯定的回答は,研修前の78.0%から研修直後には95.9%となった。同じく多職種連携に関する質問である「入院患者の口腔ケアにおいて多職種との連携は重要と思いますか」に対しては,研修前の時点ですでに97.0%が肯定的に回答していた。研修前から看護師としての基本的な認識として多職種連携の重要性は浸透していたことがうかがえる。研修後には,全員が多職種連携の重要性に対して肯定的に回答し,研修によってその意識がより強化された可能性がある。鈴木ら8)の報告によると,看護師は口腔に対する問題を最初に発見する立場にあるため歯科医療の必要性の有無を的確に判断し歯科専門職につなげる役割を担うと述べている。本研究でも新人看護師が研修を通じて医師,歯科医師,歯科衛生士をはじめとする多職種との連携の必要性や,看護師としての口腔ケアの重要性を認識しており,1年後の「多職種連携の口腔ケアの活動に関して興味がありますか」「入院患者の口腔ケアにおいて多職種との連携は重要と思いますか」の質問に肯定的回答は8割以上と高い水準を維持しており,関心の向上と重要性の認識の強化につながったと考えられる。厚生労働省によると,新人看護職員の研修は医療機関全体で取り組むものであり,専門的な知識・技術を有する職員を新人看護職員研修に参画させ,医療機関内の多職種との連携を密に取るとともに,新人看護職員が多職種の業務を理解するための機会を設けることが必要である9)と述べている。「口腔ケアの一連の流れを説明できますか」という質問に対する肯定的回答は,研修前の42.0%から研修直後には95.9%になり,講義および演習を通して短期間で口腔ケアの基本的な流れについての理解が深まったと考えられた。しかし,1年後には肯定的回答が65.0%になり,研修直後に習得した知識や理解が時間の経過とともに一部忘却されている可能性が示唆された。口腔ケアへの関心や多職種連携の意識を持続させるためには,初期研修だけでなく実務経験後,現場での継続的な口腔ケアに関する教育や多職種連携の実践の機会を確保することが重要であると考える。「口腔内の観察ポイントを説明できますか」という質問に対する肯定的回答は,研修前には31.0%であったが,研修後には94.2%,1年後においても76.8%であった。これは,口腔ケアの一連の流れと同様に研修において,口腔粘膜や歯肉の状態,歯垢・舌苔・食物残渣の付着状態や唾液・義歯の適合や動揺歯の有無などの具体的な口腔内の観察ポイントが示され,粘膜清拭や歯面・歯間の清掃演習によって体系的に学ぶ機会があったことが一因になったと考えられる。また,1年後においても7割以上の看護師が肯定的回答を行っている点は,日常の看護業務の中で口腔内観察を行う機会が一定程度あったこと,もしくは発赤,乾燥,痛み,義歯の状態など観察ポイントが比較的理解しやすい知識であった可能性が示唆された。しかし,口腔内観察に関する知識が時間の経過とともに曖昧になっている部分があることも否定できない。平上ら10)の報告によると,口腔アセスメントシートOHAT(Oral Health Assessment Tool)は観察点が明確で評価しやすく,演習を繰り返すことで確実な口腔内アセスメント能力が身につくことに繋がり口腔ケア技術を向上させたと述べている。口腔内アセスメント能力の向上には,口腔内観察のポイントを明確化した分かりやすい指標を採用することが重要である。さらに,初期研修のみに期待するのではなく,継続的な学習支援や定期的なフォローアップが口腔ケアの知識の定着へ重要な要素となっていると推測される。具体的には,実務経験1年の時点での再研修や,定期的な病棟内でのケーススタディ,実地指導による定期的な振り返りの機会を設けることが,知識の定着と実践への応用力の維持に寄与するものと考えられる。「現時点で,病棟で口腔ケアを実施する自信はありますか」という質問に対し,肯定的回答は研修前7.0%,研修後には71.1%となり,研修の即時的な効果が顕著に現れた。これは,講義および演習を通して必要な知識と技術を習得し,実践的な場面をイメージできるようになったことが,自信の向上につながったものと考えられる。一方,1年後には肯定的回答が42.9%になり,研修直後に比べて実施への自信が低下していた。秋永ら11)は看護師の口腔ケアにおいて「知識」「重要性(認識)」「自信」の全てを兼ねそろえていないと,ケアの「質」の低下に大きく影響を及ぼす可能性があると報告している。本研究でも,初期研修で得た知識・技術だけでは実践的な自信を持続させるには不十分であることが示唆され,実際の臨床場面でのフィードバックや先輩看護師からの継続的なサポート,定期的な振り返りや再研修の導入などの工夫が求められる。「口腔ケアに関する知識・技術の自己評価点」の自己評価においては,研修前42.4点から研修後67.3点となり,講義および演習を通じて,知識の習得や技術の理解が深まったことに加え,口腔ケアを実践することへの自信に繋がった可能性が考えられた。1年後には61.7点となったが,研修前と比較すると一定の学習効果が維持されたと考えられた。「本講義・演習に対する満足度」は,研修直後92.7点であり,研修内容が新人看護師にとって有意義であったことが示された。一方で,1年後には83.0点となり,実際の臨床経験を積む中で,研修で学んだ内容と現場でのギャップを感じたことや,研修から時間が経過することで,記憶の薄れや自信の低下も満足度の変化に影響していると考えられた。「口腔ケア道具の使用について説明できるものはありますか」の質問では,研修後に実習で使用した全ての口腔ケア道具が選択されており,研修により口腔ケア道具に関する知識が高まる傾向がみられた。山崎12)は看護教育において,看護学生が学内実習および学外実習でスポンジブラシと歯ブラシを使用した経験が,これらの口腔ケア道具の必要性や用途の理解につながったと述べている。本研究でも特に「歯ブラシ」「スポンジブラシ」「歯間ブラシ」など,臨床での使用頻度が高い基本的な口腔ケア道具については研修前から一定の認知があり,研修を通じてほぼ全員が説明できるようになった。さらにその認知度は1年後においても維持されていることから,これらの道具の使用方法について知識が定着している可能性が高い。一方で,「タフトブラシ」「デンタルフロス」「保湿剤」などの専門性が高く使用頻度の低いと思われる道具に関しては,研修後に理解度が上昇したものの,1年後にはいずれも低下していた。横塚ら13)は,約9割の看護師が口腔ケアにスポンジブラシを使用していることが明らかになったが,歯間清掃用具の使用は2%未満で,ほとんど使用されていなかったと報告している。「タフトブラシ」においては,研修前は9.0%であったのに対し,研修後には87.6%まで理解が深まったものの,1年後には43.8%と半数近くになり,知識や技術の定着が不十分だった可能性が考えられた。実際の使用経験が少ない口腔ケア道具に関しては,定期的な復習や実技指導の機会を設けることが,知識の定着や実践力向上に寄与することが示唆される。また,「入院患者の口腔ケアにはどのような効果があると思いますか」の質問に対し,研修前から「口腔衛生向上・口臭予防」「う蝕・歯周病の予防」「口腔・摂食嚥下機能の維持向上」「入院中の合併症予防」などの直接的な効果については高い認識を持っていた。口腔ケアの直接的効果については,看護教育の早期から学ぶ内容であり,現場でも頻繁に耳にする機会があるとの報告14),15)もあるように,今回の研修によって既存の知識が強化され,実践と理論が結びついた結果と考えられた。一方で,「入院生活の満足度向上」「食事摂取量向上・栄養状態改善」「入院期間短縮」「意識レベル向上」など,間接的・全身的な効果に関する項目については,研修前の認識が比較的低く,研修後には研修前より高値を示したが,1年後にはいずれの項目も低値となった。本研究では特に「入院期間短縮」は全体を通して認識が最も低く,間接的な効果に関しては臨床現場での実感が少ないため,知識としても定着しにくい可能性を示している。小山は16)誤嚥性肺炎患者に対するチーム医療や食事介助技術の工夫により,早期経口摂取の開始や在院日数の短縮,退院時の経口移行率向上がみられたこと,その背景要因として看護師による口腔ケアや姿勢調整が関与している可能性があることを報告している。したがって,口腔ケアの重要性をう蝕・歯周病予防や口腔衛生指導のような「直接的効果」と,合併症の予防による入院期間の短縮や口腔ケアに伴う感覚刺激による意識レベルの向上といった「間接的全身への波及効果」の両面から継続的に教育していくことが求められる。具体的な事例提示やチーム医療での情報共有などを通じて,口腔ケアの「間接的全身への波及効果」を実感できる場面を提供することが必要である。本研究は匿名の質問紙調査であったことから,研修前,研修後,実務経験1年後の3時点での変化を追跡することが統計学的に困難であった。また,口腔ケアに関する看護師の教育体制や実践環境によって口腔ケアの技術が異なるとの報告17),18)から,各個人の研修時と1年後の所属診療科を特定し,1年間の実務経験や業務内容が口腔ケアの知識・意識に与える影響を分析することが必要であると考えられた。今後は,参加者自身が自ら設定する匿名IDの導入に加え,診療科情報の大分類化といった方法を取り入れるなど,縦断的なデータ収集と匿名性の両立を図りながら,実践環境や業務内容に基づいた研修効果16),17)のより詳細な分析が必要であると考えられた。

【結 論】

本研究により,新人看護師を対象とした口腔ケア研修は,多職種連携への関心や理解,口腔ケア技術と知識の習得,実践への自信の向上に寄与する可能性が示唆された。特に研修直後においては,ほとんどの項目で肯定的回答が得られた。一方で,1年後には一部の項目において低下する傾向が見られ,知識・技術の維持や自信の継続に課題があることが明らかとなった。このことから継続的な教育支援やフォローアップの必要性が示唆された。今後は,定期的な研修機会の提供や,臨床現場での実践支援体制の構築を通じて,口腔ケアの質の向上と定着を図ることが重要である。

【謝 辞】

稿を終えるにあたり質問紙調査にご協力頂きました九州大学病院看護部の皆様に心から御礼申し上げます。

References
 
© 日本歯科衛生学会
feedback
Top