歯科衛生士を取り巻く環境は,いま大きな転換期を迎えています。
臨床の現場から生まれる問いが,教育へ,そして社会へと広がり,歯科衛生士が“研究する専門職”として期待される時代が到来しました。
そのような中で開催された日本歯科衛生学会第20回学術大会は,1,602名もの皆さまにご参加いただき,活発な議論と温かな交流に満ちた,大変意義深い大会となりました。ご参加くださいました皆さまに,心より御礼申し上げます。
本学術大会では,歯科衛生士の研究力向上を目的として,第10回大会より「研究討論会」を継続してまいりました。毎年多くの皆さまにご参加いただいた本企画ですが,本年度をもって一区切りとなりました。最終回となる今回は,本学会の発表演題でも多い「症例報告」をテーマに,研究計画の立て方や実践の中で直面した課題に焦点を当て,開業歯科医院の視点から2名の演者にご講演いただきました。また,「症例報告の進め方」に関するミニレクチャーも実施し,50名を超える参加者からは「研究への第一歩が明確になった」「挑戦する勇気をもらえた」といった声が多数寄せられ,盛会のうちに終了いたしました。
次年度からは,歯科衛生士の皆さまの研究活動をさらに後押しするため,「スタートアップ研究集会」と名称を新たにし,“研究のいろは”を学ぶ場として対面での開催を予定しております。「研究に挑戦したいが,どこから始めればよいかわからない」という不安を,皆さまと共に解消していくことを目指し,本学会としても力強く支援いたします。
さらに近年,歯科衛生士における研究の重要性は社会的にも広く認識されるようになり,歯科衛生士教育においても新たに「歯科衛生研究」の教科書が出版されました。研究は,歯科衛生士が専門職として社会に貢献するための基盤であり,その価値が教育現場でも制度的に位置づけられ始めています。これは,歯科衛生士が“研究する専門職”として未来を切り拓く時代が到来したことを示す象徴的な出来事でもあります。
さて,「研究」を身近に感じている方は,どれほどいらっしゃるでしょうか。「大切だとは思うけれど,自分には縁遠い」と感じている方も少なくないかもしれません。しかし,研究とは特別な人だけが行うものではなく,日々の臨床や現場で抱いた“なぜだろう”という小さな問いから始まる営みです。その問いを言語化し,仲間と共有し,検証するプロセスこそが,歯科衛生士の専門性を未来へとつなぐ力になります。歯科衛生士の未来は,現場から生まれる問いと,それを探究する姿勢によって切り拓かれます。そして,その第一歩を踏み出す力は,特別な誰かだけが持っているものではありません。日々の臨床や現場に向き合う歯科衛生士一人ひとりが,すでにその力を備えています。
いま,歯科衛生士の研究は社会からも注目され,まさに,私たち自身の手で未来を形づくる絶好の機会が訪れています。
歯科衛生士の未来は,“研究に踏み出すあなた”から始まります。
その一歩を,どうか恐れずに踏み出してください。