環境感染
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南米ボリビア国ラパス市における感染性下痢症の多発と河川細菌汚染の関係
丸井 あゆみ大野 章Armando Alberto BENITEZ R.Ernesto SANZETENEA C.樫谷 総子山口 恵三
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1996 年 11 巻 3 号 p. 169-175

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抄録

我々は国際協力事業団 (JICA) の南米ボリビア国消化器疾患対策プロジェクトに参加し, 1995年6月から8月にかけての3ヵ月間にわたり, ラパス市内の3歳以下の下痢症患者を対象に下痢症の原因調査を行った. また河川の糞尿汚染と下痢症発生との関係を調べるため, ラパス市内の河川について細菌学的検査を行った. またその河川水を利用して栽培されている野菜についても同様に細菌学的調査を行った.
調査の結果, 対象患者の48.4%から下痢原性大腸菌, 赤痢菌, サルモネラ, カンピロバクター, ロタウイルスが検出された. また河川調査では人家密集地域で106CFU/ml, 下流域で105CFU/mlの総細菌数が検出され, その中に腸管毒素原性大腸菌; 5株, 腸管侵襲性大腸菌; 2株, 腸管病原性大腸菌; 2株, サルモネラ04グループ; 3株が含まれていた. 野菜調査では3種類の野菜から19あたり106-108CFUの総細菌数が検出され, そのうちのワカタヤ (三つ葉の一種) から分離された31の乳糖分解コロニーを同定した結果, 14コロニーが小児下痢症の原因となるAeromonas cauiaeであった.
これらの結果は, 直接的証拠を得るまでにはいたらなかったものの, ラパス市内でみられた細菌性下痢症の多発に, ラパス河川の濃厚な細菌汚染が関与している可能性を示唆するものであった. 今後の小児下痢症対策に水系糞尿汚染防止に向けた技術協力が必要であることを示したものと思える.

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