環境感染
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産科でのMRSA感染対策と1歳未満児のMRSA保菌・発症の変化
小滝 照子三田尾 賢井原 基公木村 公重重光 昌信
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キーワード: MRSA, 院内感染, 新生児
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1998 年 13 巻 4 号 p. 250-254

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抄録

当院産科病棟では, 新生児のMRSA院内感染防止対策の重要性を認識し, 種々の対策を行ってきた.その対策内容の変更により1989年5月より1997年8月までをI期~V期に分けた.当院臨床検査部臨床微生物検査室に提出された検体のうちMRSAが検出された1歳未満の症例を, 出生日により上記の1~V期に分け検討した.
1) 院内感染対策を行う前 (1期) は, 新生児室内でMRSA膿痂疹6例, 涙嚢炎1例が認められ, 産科退院後の症例より7例のMRSAが検出された.新生児室の消毒剤による清拭, 一行為一手洗いの感染対策 (II期) を行った結果, 新生児室での膿痂疹などからMRSAは検出されなくなった.
2) 職員と入院前の妊婦鼻腔ブドウ球菌検査を行い, MRSA検出例は除菌を行った (III期, IV期).新生児室でのMRSA発症はなく, 産科退院後の症例よりMRSAが検出された例は, III期3例, IV期2例と減少した.
3) 他院NICUから当院新生児室へ転院してきたMRSA鼻腔保菌児が原因と考えられる院内感染が発生し, その後MRSA鼻腔保菌の介助者が原因と考えられる院内感染が発生した (V期).新生児室での発症は膿痂疹の1例のみであったが, 退院前の新生児鼻腔ブドウ球菌検査でMRSAの保菌が認められた.産科退院後の症例より4例にMRSAが検出された.
4) 新生児室での院内感染対策は, 新生児室での発症を激減させるだけでなく, その後のMRSA保菌・発症を減少させることが示唆された.

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