環境感染
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本邦レジオネラ肺炎患者について
1979年から1992年まで
荒川 迪生稲松 孝思江崎 孝行大井田 隆斎藤 厚副島 林造田口 善夫原 耕平藪内 英子山口 恵三上田 泰
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1993 年 8 巻 2 号 p. 1-10

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抄録

先に我々は1980年から1990年までの間に確認しえた培養陽性本邦レジオネラ肺炎症例およびその胸部X線像の解析結果を報告した. 今回は1年6ヵ月にわたる患者調査を含めて, 1979年から1992年までに培養陽性, 血清抗体価上昇または尿中特異抗原陽性の単独, または組み合わせによって診断されたレジオネラ肺炎症例について集計した.
14年間にわたるレジオネラ肺炎患者数は86例で日本全国に分布し, そのうち38例は生前または剖検時の培養陽性, 38例は血清抗体価の有意上昇, 4例は尿中特異抗原陽性, 残りの6例はPCR陽性で診断された. しかしPCR陽性患者については詳細な情報が得られなかったので, これらの6例を除外した80症例について解析した.これら80症例中61例 (76%) は市中感染であり, 19例 (23.7%) は病院内感染であった. 旅行歴のあったのは18例で, 国内12例, 海外6例であった. 集計の結果, 培養陽性の7例と尿中抗原陽性の3例で血清抗体価の有意上昇がなかったことから, 血清抗体価が陰性範囲にあってもレジオネラ肺炎を否定しえない場合があると考えられた. 市中感染症例数は院内感染症例数の2倍以上であったが, 致命率は前者で16/61 (26%), 後者で10/19 (53%) と高率であった.

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