予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
新規に診療開始した大学病院の立場から~北海道地域における大学病院の立場からの実践~
大久保 亮
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2016 年 1 巻 1 号 p. 48-52

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抄録
統合失調症患者の重篤な社会機能障害を予防し、その予後を改善する上で、早期診断、早期介入は必須の課題である。統合失調症の発症リスクが高い一群としてAt Risk Mental State(以下ARMS)が提唱されており、近年、国内の各地でARMS患者に対する専門的な診療が提供されるようになってきている。北海道大学病院精神科神経科では、2014年9月からARMS患者に対する診療として、4泊5日の「こころのリスク検査入院」を開始した。検査入院では、認知機能検査を中心とした検査を行い十分に検討した上で、その結果を患者本人、かかりつけ医に伝え、診療に役立ててもらうことを目的としている。統合失調症の認知機能障害は前駆期から出現し、社会機能との関連が深く、患者が自覚的に困っていることと関連が深いことが多い。また、認知機能の低下に対しては、認知リハビリテーションによる改善も期待することができる。ARMSが疑われる患者に対して認知機能検査を中心に検査を行い、結果を伝えることは有益な点が多い。ARMS患者の診療では、統合失調症へ移行するか否かに関心が集まりがちであるが、医療機関に来る方はそれぞれ主訴として困っていることを持っている。現在困っていることをどのように解釈することが医学的に考えて妥当か、また今後の治療に役立つかを十分に考え、その困っていることに応じた治療を提供できるような環境を整備していくことが必要である。
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© 2016 日本精神保健・予防学会
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