予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
勤労者に対する運動療法の可能性~うつ病一次予防から三次予防まで~
堀 輝
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キーワード: 運動, 勤労者, 予防, 睡眠
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2017 年 2 巻 1 号 p. 56-64

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抄録
職場における長期休職者の多くはメンタルヘルス疾患によるものである。休職に至った勤労者うつ病はその後復職に至っても、再休職率が高いことが知られている。そのため、職域においてもメンタルヘルス疾患の一次予防が重要であると考えられている。一次予防の視点からはセルフケアが重要であると考えられる。健常勤労者を対象に4週間のウォーキングの介入では、運動習慣がない勤労者は、抑うつ症状の改善、社会適応度の改善が期待でき、運動習慣の有無を問わず自覚的睡眠の質の改善が期待できる。また、休職中の勤労者うつ病患者は復職決定時に活動性が低いとその後の復職継続率が低いと報告されており、うつ病治療急性期には休養に主眼が置かれるものの、回復過程では活動性をあげていく必要があり、運動療法の役割は重要であると思われる。さらに、近年では運動療法の効果のメカニズムについても解明されつつあり、炎症性サイトカイン、神経新生の観点からの報告が増えつつある。その一方で、この領域の研究は非常に少なく、業種、職階、各国ごとの文化的な違いなどが大きいことからそのデータを応用していくには今後のさらなる研究の発展が望まれる。
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© 2017 日本精神保健・予防学会
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