2024 年 83 巻 3 号 p. 163-172
Purpose: In this study, we investigated the effectiveness and feasibility of physical therapist-supervised vestibular rehabilitation (PT-VR) in patients with persistent postural-perceptual dizziness (PPPD) who are unresponsive to medication and/or home-based vestibular rehabilitation (home-VR).
Methods: Seven PPPD patients who exhibited resistance to medication and/or home-VR were enrolled. In conjunction with ongoing home-VR, the patients underwent 7 sessions of PT-VR over a three-month period. Improvement of the symptoms and feasibility of the program were evaluated.
Results: Both the PT-VR and home-VR interventions were completed in all the 7 patients. The Dizziness Handicap Inventory score also showed significant improvement, decreasing from the pre-intervention score of 50.1 ± 12.1 points to 37.7 ± 20.2 at 1 month post-intervention and 26.0 ± 17.5% at 3 months post-intervention (p < 0.001). No adverse events were reported.
Conclusion: For PPPD patients showing inadequate response to initial treatment, the combination of PT-VR and home-VR is an effective therapeutic approach for improving the symptom of dizziness.
持続性知覚性姿勢誘発めまい(persistent postural-perceptual dizziness; PPPD)は,3か月以上持続する浮遊感,不安定感,非回転性めまいを呈する慢性機能性前庭疾患である1)。PPPDは自然軽快することは少なく,無治療の場合は,7.5割程度の症例で不安やうつを続発し長期にめまい症状が持続する1)2)。また,比較的若年に発症しやすく,日常生活の支障度も高く,社会的にも重要な疾患である1)2)ことから,より効果的な治療が必要とされる。
PPPDに対する治療としては,これまでに,薬物治療3)4),前庭リハビリテーション(前庭リハ)5)6),認知行動療法7)8)の有効性が報告されている。薬物治療については,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が,めまい症状や日常生活支障度の緩和に有用で,5~6.5割程度の患者が薬物治療に反応すると報告されている3)4)が,副作用のために治療を中断する症例や効果がない症例が2~4割と少なくない3)9)。前庭リハは,めまい症状の改善に有用とされる5)6)が,患者自身が自宅で前庭リハを継続できない症例もあり,継続可能である症例は6~7割とされる6)。認知行動療法は,めまい症状の改善に有用であり7),第三世代の認知行動療法であるアクセプタンス・コミットメント・セラピー(Acceptance Commitment Therapy)では74.1%がめまい症状の改善を認めたとされる8)。しかし,認知行動療法を専門に実施できる医師や心理士が必要であり,実施可能施設が少なく,現在,我々の施設でも実施できない状況にある。
これらの治療方法の中で,薬物治療や医師がパンフレットなどを用い患者に指導し患者自身が自宅で行う前庭リハ(home前庭リハ)が,多くの施設で実施可能であるため,最初に行う治療として実施しやすい。しかし,初回治療にて十分に症状が改善しない場合や治療自体に十分取り組めない場合があり,このような症例に対して,認知行動療法を提案できる環境があれば良いが,そうでない場合は治療に難渋することも多い。
一方,理学療法士(physical therapist; PT)が直接指導管理する前庭リハ(PT前庭リハ)を実施できる施設や前庭リハを実施できるPTは,本邦において近年増加傾向にある10)~12)。我々の施設においても,2021年より末梢前庭障害に対し,PT前庭リハを実施している13)。
そこで,PPPD症例の中で,薬物療法やhome前庭リハなどの初回治療効果が不十分な症例に対して,PT前庭リハが,めまい症状改善のための治療の有用な選択肢になる可能性があると考え,PT前庭リハの効果とhome前庭リハのアドヒアランスを予備的に検討したので報告する。
2022年2月から2023年4月までに名古屋市立大学病院耳鼻咽喉科にてPPPDと診断され1),初回治療として薬物治療やhome前庭リハを施行するも,治療の効果が十分得られていない症例のうち,PT前庭リハを提案し希望した7例(55.1 ± 20.4歳,26~78歳,女性7例)を対象とした。治療の効果はDizziness handicap inventory(DHI)14)において18点以上の改善がない,または16点以下に至らない,かつ自覚的にも治療効果を十分と感じていない場合を効果不十分の基準とした。
PT前庭リハは,当院にて末梢前庭障害症例に行っている前庭リハと同様のプログラムにて外来通院にて行った。スケジュールは,PTによる直接指導は,最初の1か月は1週間に1回,1か月後からは1か月に1回で3か月間に計7回施行した(図1)。1回のPT前庭リハは2単位40分とした。また,home前庭リハについては,パンフレット(図2)に沿って毎日10分以上のリハビリテーションを2回(合計20分以上)行うよう指示し,日記のページに実施した時間を記録するように指示した。前庭リハの内容は,末梢前庭障害症例に行う項目と同様で適応,慣れ,代用の3要素を含め,動作の大きさや速さなどの強度は,めまいを軽度から中等度に感じる程度で実施するよう指示し,めまいを軽く感じるようになれば,坐位での動作から立位への動作へと,より難易度の高い動作に移行するよう指示した。医師からの説明は,末梢前庭障害症例に施行する前庭リハ時の説明と比較し,PPPD症例には,めまい症状が増悪して継続できない場合は十分に休息するようにすること,体調により時間を短縮することや実施しない日を作ることを許容することを強調して伝えた。PTによる指導は,末梢前庭障害症例に施行している内容と同様とし,具体的には,home前庭リハの内容を正しく安全に行うこと,パンフレットに記載の通りに難易度を調整する際の助言を行うこと,home前庭リハの実施状況を確認し実施継続を促すことを中心に行い,特に支障のある動作がある際にはその動作にあわせ応用する動作の指導も行った。視覚刺激に対する慣れの指導は行わなかった。また,PT前庭リハ前より行っているSSRIやSNRIの薬物治療は継続した。

理学療法士が指導管理する前庭リハビリテーション(PT前庭リハ)は,最初の4週間は毎週1回40分間行い,1か月後から3か月までは月に1回40分間行い,合計7回行う。自宅で行う前庭リハビリテーション(home前庭リハ)は,毎日自宅で20分以上,パンフレットに沿って行う。評価はPT前庭リハ開始直前,開始1か月後,3か月後に行う。

前庭リハビリテーションの内容を図と文章にて示してある。また日記のページには,前庭リハビリテーションを実施した時間(分)の記入欄と感想や体調などを書き込める自由記載欄を設け,1ページあたり1週間分記載できるようにしてある。
治療効果については,PT前庭リハの直前,1か月後,3か月後の以下の項目を用いて検討した。めまいの重症度・生活の支障度をDHI14),PPPDの増悪因子による増悪の程度・PPPDの重症度をThe Niigata PPPD questionnaire(NPQ)15),うつ不安の程度をHospital anxiety and depression scale(HADS)16),めまいと自律神経症状の症状頻度をVestibular symptom scale short form(VSS)17),身体の安定性を重心動揺検査(総軌跡長,外周面積,速度ロンベルグ率,閉眼ラバー比)(アニマ社,GW-5000を使用)にて評価を行った。
次に,PT前庭リハのプログラム中のhome前庭リハのアドヒアランス(1週間当たりの実施日数と1日当たりの実施時間),3か月間のPT前庭リハの完遂率,日記のページの自由記載の内容,有害事象を検討した。
統計学的検討は,EZR18)を用い,連続変数は対応のあるt検定や反復分散分析,post hoc testとして多重比較をBonferroni検定にて行い,p < 0.05を統計学的に有意と定義した。
また,本研究はヘルシンキ宣言の人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に沿って行ったものであり,名古屋市立大学大学院医学研究科及び医学部付属病院医学系研究倫理審査委員会の承認を得て行った(管理番号46-21-0002)。
全7例の背景を表1に示す。罹病期間は35.9 ± 43.7か月(中央値10か月,3か月~10年),先行するめまいは5例が末梢前庭性めまい,2例が原因不明の浮遊性めまいであった。PT前庭リハの開始前に施行されていた初回治療の内容は,7例中5例がSSRIまたはSNRIの薬物治療が施行されており,5例とも内服を継続していた。2例はSSRIやSNRIの薬物治療を当初より希望しなかった。7例全例に医師がパンフレットを用いてhome前庭リハを指示していた。しかし,home前庭リハに全く取り組めない,または,指示通りの時間取り組めないなど,全例がhome前庭リハを十分に実施できていなかった。初回治療前のDHIは56.0 ± 17.8点,NPQは37.7 ± 21.0点,HADSは17.5 ± 5.9点,VSSは23.0 ± 10.0点であった。初回治療後(PT前庭リハの開始前)のDHIは50.5 ± 12.1点,NPQは29.4 ± 13.1,HADSは15.3 ± 5.9点,VSSは19.3 ± 9.7点でいずれも初回治療前後では有意な改善は認めていなかった(いずれもp > 0.05)。
| 症例 | 年齢 | 性別 | 罹病期間 | 先行めまい疾患 | 初回治療内容 | DHI | NPQ | HADS | VSS | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 前 | 後 | 前 | 後 | 前 | 後 | 前 | 後 | ||||||
| 1 | 26歳 | 女 | 10か月 | 原因不明 | パロキセチン+home前庭リハ | 38 | 54 | 18 | 22 | 25 | 21 | 18 | 32 |
| 2 | 72歳 | 女 | 4か月 | 良性発作性頭位めまい症 | home前庭リハのみ | 40 | 34 | 7 | 4 | 12 | 11 | 8 | 6 |
| 3 | 78歳 | 女 | 5年 | 原因不明 | ボルチオキセチン+home前庭リハ | 60 | 46 | 57 | 39 | 20 | 10 | 34 | 16 |
| 4 | 77歳 | 女 | 10年 | 左前庭神経炎 | セルトラリン+home前庭リハ | 62 | 50 | 42 | 38 | 13 | 15 | 18 | 31 |
| 5 | 48歳 | 女 | 4年 | 右メニエール病 | ボルチオキセチン+home前庭リハ | 50 | 46 | 43 | 32 | 12 | 8 | 31 | 23 |
| 6 | 44歳 | 女 | 3か月 | めまいを伴う突発性難聴 | デュロキセチン+home前庭リハ | NA | 50 | NA | 29 | NA | 23 | NA | 14 |
| 7 | 41歳 | 女 | 6か月 | 良性発作性頭位めまい症 | home前庭リハのみ | 86 | 74 | 59 | 42 | 23 | 19 | 29 | 13 |
前:初期治療前,後:初期治療後・前庭リハビリテーション開始前,DHI:Dizziness Handicap Inventory,NPQ:The Niigata PPPD Questionnaire,HADS:Hospital Anxiety and Depression Scale,VSS:Vestibular Symptom Scale-short form,home前庭リハ:自宅にて行う前庭リハビリテーション,NA:not available
PT前庭リハの治療効果の検討のため,PT前庭リハ前,1か月後,3か月後のDHI,NPQ,HADS,VSS,重心動揺検査結果に対して,反復分散分析を行った。
DHIについては,合計点と身体面,感情面,機能面の全項目にて有意に改善を認めた(順に,p < 0.001,p = 0.002,p = 0.002,p = 0.005)(図3)。多重比較では,全項目でPT前庭リハ前と比較し3か月後は有意な改善を認め(順に,p = 0.009,p = 0.0046,p = 0.024,p = 0.021),PT前庭リハ前と比較し1か月後においては感情面のみ有意に改善を認め(p = 0.020),合計点,身体面,機能面の項目については,平均値は減少したが有意な点数変化は認めなかった(p > 0.05)。

A 合計,B 身体面,C 感情面,D 機能面
* p < 0.05,** p < 0.01,*** p < 0.005
NPQは,動作の項目について,有意に改善を認め(p = 0.028),多重比較において,PT前庭リハ前と比較し3か月後に有意な改善を認めた(p = 0.029)(図4)。一方,合計点と立位・歩行,視覚刺激の項目はPT前庭リハ前と比較し3か月後の平均値は減少したものの,有意な変化は認めなかった(p > 0.05)。

A 合計,B 立位・歩行,C 動作,D 視覚刺激
* p < 0.05
HADSは,合計点,うつ,不安の全ての項目において,PT前庭リハ前と比較し3か月後の平均値は減少したものの,有意な変化は認めなかった(p > 0.05)(図5)。

A 合計,B うつ,C 不安
VSSは,合計点と前庭症状の項目において,有意に改善を認め(順に,p = 0.006,p = 0.003),多重比較において,合計点と前庭症状の項目は,PT前庭リハ前と比較し3か月後が有意な改善を認めた(順に,p = 0.010,p = 0.008)(図6)。一方,自律神経症状の項目は,平均値は減少したが,有意な改善は認めなかった(p > 0.05)。

A 合計,B 前庭症状,C 自律神経症状
* p < 0.01
重心動揺検査結果は,総軌跡長(開眼・閉眼),速度ロンベルグ率,閉眼ラバー比の全てにおいて,有意な変化は認めなかった(p > 0.05)(図7)。

A 総軌跡長(開眼,1分),B 総軌跡長(閉眼,1分),C 速度ロンベルグ率,D 閉眼ラバー比
PT前庭リハ中のhome前庭リハのアドヒアランスは,毎日20分以上実施するように指示したのに対し,1か月後評価時は1週間に5.0 ± 2.3日,1日当たり16.8 ± 4.9分,3か月後評価時は1週間に5.0 ± 2.3日,1日当たり16.2 ± 8.7分であった。PT前庭リハの完遂率は100%で,7例全例が3か月間,計7回のPT前庭リハを実施できた。自由記載欄の内容の中でPTが関わる内容を表2に抜粋し示した。PT前庭リハ前には一人でリハビリを行うことができなかったが,PTに見守られながら前庭リハを行うことにより,恐怖感や不安感が減少し,前庭リハに取り組むためのきっかけができた症例が多かった。さらに,PTに応援されることや,PTに頑張ったことを報告したい気持ちがhome前庭リハを継続するきっかけとなる症例があった。有害事象の報告はなかった。
| 症例 | 年齢 | 性別 | 自由記載欄の内容(一部改変) |
|---|---|---|---|
| 1 | 26歳 | 女 | めまいが悪化するのが怖くて,一人ではリハビリに向き合えなかったが,PTが一緒に動いてくれるので心強かった。 体調に合わせて省略してもらえ,無理なく続けられた。通院が楽しみになり続けようと思えた。 |
| 2 | 72歳 | 女 | めまいが恐怖で,頭をできる限り動かさないようにしていた。 PTに首の緊張をほぐしてもらい,頭を動かす勇気が出た。PTと一緒だったので,動く際の安心感があった。 |
| 3 | 78歳 | 女 | 目を半分しか開けないで生活していたが,PTに励まされて目を開けようと思えた。 リハビリを習慣化できないでいたが,応援してもらえ,1週間後に報告しようと思い頑張って続けた。 |
| 4 | 77歳 | 女 | リハビリをすると,ふわふわが強くなり,気分が悪くなっていた。めまいで気分が悪くなっても数分待てば落ち着くことがわかった。ふわふわが強くなるくらい頑張ることでこの後効果が出ると思って頑張っていたら,3週間目から,ゆれる感覚が減ってきて嬉しかった。つらい日は休むことも許してもらえて良かった。。 |
| 5 | 48歳 | 女 | 最初は動くとめまいが悪化するので動けなかった。めまいが強くなった際に,落ち着くまでPTが一緒に待ってくれ,待てば収まることがわかった。リハビリ中にPTとたくさん笑ったら,めまいの感覚を忘れて動いていた。 物を拾うことに特化したリハビリを自分用に提案してもらえ,自分でも家でマットの上でするように工夫してみた。 |
| 6 | 44歳 | 女 | 人混みでふわふわが強くなるので避けていた。 めまいが気にならなくなり,就職活動も始められた。PTに報告して喜んでもらえた。 |
| 7 | 41歳 | 女 | 頭を動かすとBPPVのめまいが起きる予感がして一人ではリハビリができなかった。 いつもPTに見守られていると思うと,勇気を出して頭を動かすことができた。 |
PT:理学療法士,BPPV:良性発作性頭位めまい症
今回,初回治療として薬物療法やhome前庭リハを施行するも十分な改善が得られなかったPPPD症例に対し,PT前庭リハを施行し,その効果とhome前庭リハのアドヒアランスを検討した。その結果,DHIの全項目,NPQの動作,VSSの前庭症状の項目で改善を認めた。一方,NPQの立位・歩行,視覚刺激,HADS,VSSの自律神経症状,重心動揺検査結果については,有意な変化は認めなかった。また,home前庭リハを毎日20分以上実施するようにとの指示に対し,7割の日数,8割以上の時間にて実施されていた。
前庭リハは,様々な前庭障害により生じためまいやふらつきに対し,適応,慣れ,代用を目的として行う理学療法である19)。PPPDでは,適応,慣れ,代用に加え,高度にめまい感に対して警戒していた状態から,脱感作させることも目的となる3)20)。PPPDに対してhome前庭リハのみを施行した後ろ向き研究にて,19例中12例が2か月間のhome前庭リハを完遂し,完遂した症例においてはDHIとNPQが有意に改善したと報告されている6)。一方で,前庭リハを実施できないアドヒアランスの悪い症例が取り残される点を問題点として挙げている6)。
PPPD症例の中には,前庭リハに取り組めない症例が一定数存在する6)。今回の研究に参加した症例は,初回治療の際にhome前庭リハを指示されたものの,取り組めない症例や,取り組んだが中断した症例であり,決して,前庭リハを実施したのに効果がなかった症例ではなかった。つまり,前庭リハのアドヒアランスを改善することが要になることが予想される。PPPD症例は,前庭障害症例と同様に頭部動作など動作にてめまい症状が増悪する1)。前庭障害症例は動作にて増悪しためまい症状は静止すれば間もなく症状は消失する一方,PPPD症例では動作にてめまいが悪化した際に,しばらく増悪しためまいが残存し,そしてそれが積み重なることで徐々にめまい症状が増悪する1)。そのため,PPPD症例にとっては,一定時間前庭リハを継続して行うことが難しい可能性がある。さらに,PPPD症例は発症,症状維持,治療中において不安,時にうつや恐怖症が関連していることが多く21),めまいが増強する不安感,恐怖感という心理面を理由に,前庭リハに取り組むことができない症例もあると考える。よって,PPPDに対する前庭リハのプログラムは,home前庭リハが十分に行えていない症例の存在も考慮し,より効果的な方法を探索することが課題となる。
PPPDに対して,一般的なhome前庭リハの効果を高める目的で,認知行動療法の組み合わせやWebによるリハビリテーションの管理などがなされている5)9)22)23)。認知行動療法を組み合わせた報告では,6セッションの認知行動療法をhome前庭リハに組み合わせて行い4か月後に評価をした検討では,20例中19例で完遂でき,平均のDHIは63.8点から37.2点まで改善していた22)。また,週1回の6セッションの第3世代の認知行動療法とhome前庭リハを組み合わせたものでは,27例に実施し全例完遂し,DHIは治療前49.16点,治療直後38.5点と改善を示し,経過を追えた25例については治療6か月後にDHIが26.5点と長期に改善が維持されていた8)。これら認知行動療法と組み合わせたhome前庭リハは,完遂率は高く,効果は良好であり,難治例に対して期待が持てるが,認知行動療法を専門とする治療者を必要とするため本邦においては実施可能な施設は限られることになる。次に,Webにて管理しながら6週間行ったhome前庭リハの報告では,10例中9例で完遂し,VSSが32.9点から26.9点に改善し,NPQは37.3点から37.1点に改善している23)。Webにて管理するhome前庭リハは,完遂率が高く,効果もあり,医療者の直接介入なしで施行できるため簡便である一方,Webシステムの構築が必要であり,オンライン診療が浸透していない本邦での導入はハードルが高い。さらに,個別カスタマイズした前庭リハのプログラムを初回のみ医療者が直接指導管理して実施し,以後6週間home前庭リハを行った報告では,DHIが57点から36点まで改善し,66.7%の症例にて有効であった5)。症例に応じて難易度も含め個別にプログラムした点や,初回に直接前庭リハを指導している点は,PTの協力が得られる施設では導入しやすく,今回の研究と近い介入方法で,実施可能性が高いと考えた。
今回,自施設の体制でhome前庭リハに追加できる治療手段として,PT前庭リハを考えた。前庭リハを十分に実施できるようにするために,関わる医療者の職種としては,医師・看護師・言語聴覚士・臨床心理士などが候補に挙げられる。その中で医師や看護師が1人ずつに長時間費やすことは診療体制として現実的ではなく,また,実際に体を動かして指導する必要があると考えていたことから,日ごろから全身の理学療法を担当しているPTが指導するのが,言語聴覚士や臨床心理士よりふさわしいと考えた。また,前庭リハの際にPTが指導する上乗せ効果は様々であるが,アドヒアランスには影響が出るとされており24),本研究の対象者がhome前庭リハのアドヒアランスが悪い症例であったことからも,PTによる指導が適切と考えた。PT前庭リハを実施する回数に関しては,単純に前庭リハの方法を正しく指導するだけが目的であれば,Nadaらの報告5)のように単回の介入も選択肢に挙がるが,我々が対象にしたPPPD症例は初回治療効果が思わしくない症例であり,前庭リハに取り組むこと自体が困難であることが想定されたため,複数回の介入をして管理する方法にした。当院のPTが既に前庭障害症例に3か月間に7回介入するプログラムを行い慣れていることから,そのプログラムを採用した。その結果は,PT前庭リハ前にはめまい症状の改善を認めなかった難治症例であるにも関わらず,めまいによる支障度,めまいの重症度,めまいを感じる頻度が改善しており有効であった。特に,NPQの動作の項目の改善より,動作時にめまいが増悪することが減っていたと考えられた。一方で,NPQの視覚刺激の項目,HADS,VSSの自律神経症状,重心動揺検査については有意な変化は認めなかったことより,PT前庭リハは,視覚刺激により増悪するめまい,心理面,自律神経症状,体平衡機能などに対しての効果は限定的であった。
PTによる指導の追加がめまい症状の改善に効果を与えた理由として,直接的なものとしては適切な前庭リハを安全に施行できるよう指導した点と考える。さらに,本研究に参加した7例にとっては,前庭リハを開始するきっかけ作りと,毎日継続する動機に対しても効果があったと考えられた。7例全例が,PTが指導する前はめまいに対する恐怖感,不安感のために十分な前庭リハができていなかった。しかし,PTに寄り添われることにより,不安がやわらぎ,動く勇気が持てたようであった。また,動作などの増悪因子を重ねることにより増悪していくめまい症状に対しても,途中でめまいが増強した際に間もなく元のレベルのめまいまで戻るという経験をPTに見守られながら繰り返すことができ,自宅で行う自信につながり,自身で行うhome前庭リハを開始するきっかけを作ることができたと考えた。また,参加した全例がPT前庭リハのプログラムを完遂でき,自宅でのhome前庭リハを継続していたことについては,1週間(または1か月間)に取り組んだ成果を日記の実施記録や実際の動作を毎回PTが見て確認するようにしたことや,医療者の期待に応えようとして頑張ることができたなどの感想があったことからも,PTによる頻回の指導と管理がモチベーションの維持に役立ったと考えられた。
PT前庭リハ中のアドヒアランスは,home前庭リハについても1週間のうちの5日は取り組むことができ,1日20分の指示に対して16分程度実施ができており,PTが関わる前にほぼ取り組めていなかったことを考えると十分な効果が得られていると考えられた。また,7例ともPT前庭リハを完遂でき,有害事象もなく,PTが前庭リハを行う環境があれば実施可能な治療法と考えられた。
PTが管理指導する前庭リハについて,米国では1990年代にはPTが前庭リハに取り組み始め,前庭リハを専門とするPTが医療現場で前庭リハを実施されているが25),本邦ではPTが前庭リハを行う施設はまだ少ない。その点からは,本邦でPPPD全例にPTが指導管理する前庭リハを行うことは現実的ではない。薬物治療や,home前庭リハのみでも改善する症例もあることから,今回のように,初回治療の効果が乏しい症例に対してPT前庭リハを検討するのが良いと考える。特に,home前庭リハへの取り組みが十分できていない症例に適すると考えられる。
本検討の限界としては,まず,対象者が少数の予備的研究であり,PT前庭リハの効果については,今後対照を設けた比較試験にて症例数を増やし,再検討をする必要がある。次にPT前庭リハの方法・頻度については,今回は前庭障害症例に行っているプログラムを便宜的に利用したため,PPPDに対するより適切な方法や頻度は検討する必要がある。さらに,動作についての改善は認めたが,視覚刺激についての有意な改善は認めなかった。今後,視覚刺激も含めたPPPDに特化したリハビリの検討も必要である。
初回治療として薬物療法やhome前庭リハを施行するも十分な改善が得られなかったPPPDに症例に対し,PT前庭リハを施行した。その結果,めまい症状の改善が得られ,特に動作時のめまい症状が改善した。また,home前庭リハのアドヒアランスやPT前庭リハの完遂率が高く,有害事象もなかった。初回治療に反応しないPPPDに症例に対してPT前庭リハは1つの選択肢になることが示唆された。
本研究の一部はJSPS科研費20K11161の助成により行われた。
本研究の要旨は2023年10月第82回日本めまい平衡医学会総会学術講演会(新潟)にて報告した。
利益相反に該当する事項はない。