Equilibrium Research
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原著
外側半規管型良性発作性頭位めまい症(クプラ結石症)に対する慣性と重力負荷を組み合わせた治療法の効果
市村 彰英
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2025 年 84 巻 3 号 p. 120-127

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Translated Abstract

Objective: In this study, we sought to improve the treatment outcomes of lateral semicircular canal benign paroxysmal positional vertigo (cupulolithiasis) through a new treatment procedure that combines inertial and gravity loading.

Materials and Methods: We retrospectively evaluated the treatment efficacy of combined inertial and gravity loading in 15 patients with lateral semicircular canal benign paroxysmal positional vertigo (cupulolithiasis) who visited our clinic between June 2021 and November 2022.

Results: The treatment procedure yielded an immediate effect in 10 of 15 patients (66.7%). Inertial loading resulted in successful detachment of the otoliths from the cupula in 4 of the 15 patients (26.7%), whereas gravity loading, which was added in the 11 patients in whom the otoliths remained undetached from the cupula following inertial loading, led to successful detachment of the otoliths from the cupula in 6 patients (54.5%).

Conclusion: This treatment procedure for lateral semicircular canal benign paroxysmal positional vertigo (cupulolithiasis) was more effective than the other treatment procedures, with our findings showing that gravity loading, even for a short duration, was useful for detaching the otoliths from the cupula.

 はじめに

良性発作性頭位めまい症Benign Paroxysmal Positional Vertigo(BPPV)のなかでも,外側半規管が関与するBPPV(外側半規管型BPPV)は,仰臥位頭位眼振検査の左下と右下頭位で方向が逆転する水平性眼振を特徴とし,この眼振の性状から以下のように分類される。潜時と疲労を伴う一過性方向交代性向地性眼振,および潜時と疲労を伴わない持続性方向交代性背地性眼振である。一過性方向交代性向地性眼振は外側半規管の遊離耳石(半規管結石症)1)~3),また持続性方向交代性背地性眼振は耳石がクプラの卵形嚢側または管側に付着することが原因(クプラ結石症)2)~4)と報告されている。

外側半規管型BPPVのうち,仰臥位頭位眼振検査で持続性方向交代性背地性眼振が誘発されるクプラ結石症の治療は,最初に乳様突起の振動,慣性や重力負荷などを用いて耳石をクプラから剥離し,剥離した耳石を卵形嚢内に移動させる必要がある。クプラは主にムコ多糖類で構成されており,粘着性が強いため付着した耳石の剥離は困難である5)。このため,クプラ結石症に対する治療は半規管結石症に比べ1回の操作では効果が低く,標準的な治療法は確立されていない6)7)。耳石をクプラから剥離させるために重力を利用したforced prolonged position(FPP)8)9),慣性を利用したmodified Gufoni法10)~14)やZuma法15)16),水平面や垂直面で頭を素早く回転させる方法8)12)17)18),側方頭部傾斜・跳躍運動19),乳様突起振動を利用したcupulolithiasis repositioning maneuver(CuRM)20)21)などの治療法が提案されている。今回,外側半規管型BPPV(クプラ結石症)の治療成績を向上させるために,慣性と重力負荷を組み合わせた治療法を考案した。この治療法の効果と得られた知見につき報告する。

 対象と方法

2021年6月から2022年11月までの1年6か月間に,当院を受診した外側半規管型BPPV(クプラ結石症)患者15名を対象とした。クプラ結石症の診断は,日本めまい平衡医学会の診断基準22)に基づいて行った。

既に治療済みの外側半規管型BPPV(クプラ結石症)やクプラ結石症以外の疾患関与を除外し,安全に治療を行うために除外基準は以下の通りとした。(1)外傷後,前庭神経炎,突発性難聴,メニエール病などに伴う二次性BPPV。(2)非典型的な頭位眼振や多半規管病変を伴うBPPV。(3)内服治療や頭位治療後の患者。(4)頭位性めまいや眼振の原因が中枢性疾患と診断できる患者。(5)首を素早く回せない,側臥位や仰臥位を保てない患者。

外側半規管型BPPV(クプラ結石症)と診断するための頭位・頭位変換眼振検査やbow and lean testで誘発される眼振,および治療手技中の眼振は赤外線CCDカメラ(IEM-2,永島,東京)を用いて観察,記録した。中枢性疾患が原因の方向交代性背地性眼振を除外するため,すべての患者に脳神経症状や四肢失調の有無を検査し,注視眼振検査,綿棒を用いた追跡眼球運動検査や急速眼球運動検査,ドラム視運動性眼振検査などの神経学的検査を行った。患側は,頭位眼振検査で患側下頭位が健側下頭位よりも眼振が弱いことを基準に決定した23)24)。眼振の強さに明らかな差がない場合は,bow and lean testで背屈位は患側向き前屈位は健側向き眼振が出現することを基準に患側を決定した25)26)

今回の方法は,まず耳石をクプラから剥離させるために,慣性を利用した患側下135度法18)を行った。具体的には患側下135度側臥位から仰臥位正面へ,頭部と体を素早く回転させる動作を3回繰り返した。その後,患者は患側下側臥位の姿勢を2分間保持した(図1)。2分間の姿勢保持は,modified Gufoni法10)~14)における慣性負荷後2分間の側臥位45度上方頭部保持を参考にした。

図1  左外側半規管型BPPV(クプラ結石症)に対する患側下135度法

(1)左下135度側臥位をとる。

(2)左下135度側臥位から仰臥位正面へ頭と体を素早く回転させる。

(3)(2)の動作を3回繰り返した後,左下側臥位を2分間保持する。

×:患側左

次に以下の操作を行った(図2)。(1)耳石がクプラから剥離しているかどうかを確認するために,患側下側臥位で健側向き眼振が消失しているかどうかを観察した。(2)眼振が消失した場合は頭部を体ごとゆっくり健側に180度回転させた。(3)健側下側臥位で眼振が消失,または健側向き眼振がみられた場合は,患者の頭をさらに健側方向に45度回転させ剥離した耳石を卵形嚢内に移動させた。(4)2分後に患者を座位に戻し,治療後1時間は頭を大きく動かさないように指示した。

図2  左外側半規管型BPPV(クプラ結石症)に対する患側下135度法後の耳石置換法

(1)患側下側臥位で健側向き眼振が消失しているかどうかを観察する。

(2)眼振が消失した場合は頭部を体ごと180度健側に回転させる。

(3)健側下側臥位で眼振が消失, または健側向き眼振がみられた場合は患者の頭をさらに健側方向に45度回転させる。

(4)2分後に患者を座位にする。

×:患側左

患側下135度法18)施行後も耳石がクプラから剥離しなかった場合,つまり患側下側臥位で眼振が消失しなかった場合や,健側下側臥位で患側向き眼振が出現した場合には,クプラから耳石を剥離させる重力負荷の効果を検証する目的で,引き続き10分間の患側下側臥位を最大2回繰り返した。具体的には以下の通りである。(1)患側下側臥位(最初の側臥位)を10分間保持した後,眼振が消失したかどうかを観察し,(2)眼振が消失した場合は患側下135度法18)施行後と同じ方法を行った(図2)。(3)最初の側臥位の後に眼振が消失しなかった場合や,健側下側臥位で患側向き眼振が出現した場合は,耳石がクプラに付着したままと考え,再度患側下側臥位を10分間保持した(2回目の側臥位)。(4)2回目の側臥位をとった後は最初の側臥位をとったときと同様な操作を行い(図2),耳石がクプラから剥離しなかった場合には患者を座位とし治療を終了した。治療に反応しなかった患者に対して,非特異的理学療法の指導や内服治療は行わなかった。治療を行った患者には,経過観察のため5日以内に再診するように指示した。

治療効果の判定は,健側下側臥位で眼振が消失,または向地性眼振が出現した場合を効果ありとした。再診時には,すべての患者に対して頭位・頭位変換眼振検査やbow and lean test25)26)を実施した。再診時に仰臥位頭位眼振検査で一過性の方向交代性向地性眼振が出現した患者にはLempert法27),後半規管型BPPVに移行した患者にはEpley法28)を行った。

今回の後ろ向き観察研究では,対象としたすべての患者にBPPVの病態生理と治療に関する情報を記載した文書を渡し,治療に対する同意を得た。また,ヘルシンキ宣言ならびに文部科学省・厚生労働省が定める倫理指針に従って実施し,日本医師会倫理審査委員会の承認を得た(承認番号R4-17,承認日2023年2月17日)。

 結果

表1に外側半規管型BPPV(クプラ結石症)患者15名の特徴と治療結果を示した。7名が男性,8名が女性で,年齢は40~82歳(平均61.2 ± 14.2歳,中央値58歳)であった。患側下135度法18)施行後,15名中6名の眼振が消失した。これら6名を患側下から健側下側臥位にすると,1名が眼振消失し,3名に向地性眼振,2名に背地性眼振が出現した。つまり,患側下135度法18)を行うことにより15名中4名(26.7%)に治療効果が認められた。

表1 外側半規管型BPPV(クプラ結石症)15名の特徴と治療結果

症例 年齢/性別 患側 発症から受診までの日数(日) 患側下135度法後 最初の側臥位後 2回目の側臥位後 再診時の眼振(日)
患側下での眼振 健側下での眼振 患側下での眼振 健側下での眼振 患側下での眼振 健側下での眼振
1 65/男性 1 なし 向地性 なし(5)
2 58/女性 0 背地性 なし 向地性 なし(2)
3 76/男性 1 背地性 背地性 背地性 向地性(2)
4 57/女性 3 なし 向地性 なし(3)
5 81/男性 1 なし 向地性 なし(1)
6 62/女性 1 なし 背地性 なし 背地性 なし 背地性 受診せず
7 41/女性 1 背地性 背地性 なし 向地性 なし(1)
8 82/男性 1 背地性 なし 向地性 なし(3)
9 78/女性 2 なし 背地性 なし 背地性 なし 二相性 後半規管(2)
10 77/女性 3 背地性 背地性 背地性 なし(5)
11 50/女性 0 背地性 なし 背地性 なし なし なし(2)
12 56/男性 0 背地性 なし 背地性 なし 背地性 向地性(5)
13 44/男性 1 背地性 背地性 なし 向地性 なし(4)
14 51/男性 1 なし なし なし(5)
15 40/女性 1 背地性 なし なし なし(1)

0:発症当日受診,後半規管:後半規管型BPPV(患側左),再診時の眼振( ):初診から再診までの日数

最初の患側下側臥位後,11名中7名の眼振が消失した。これら7名を健側下側臥位にすると,1名が眼振消失し,2名に向地性眼振,4名に背地性眼振が出現した。つまり,最初の患側下側臥位をとることにより11名中3名(27.3%)に治療効果が認められた。

2回目の患側下側臥位後,8名中6名の眼振が消失した。これら6名を健側下側臥位にすると,1名が眼振消失し,2名に向地性眼振,2名に背地性眼振が出現した。また,1名に向地性から背地性へ方向が変化する二相性眼振がみられた。つまり,2回目の患側下側臥位をとることにより8名中3名(37.5%)に治療効果が認められた。患側下135度法18)と2回の患側下側臥位を合わせた一連の治療法により,15名中10名(66.7%)に治療効果が認められた(図3)。今回の治療中に嘔吐や首の痛みを訴える患者や,途中でめまいや嘔気が強くなり操作を中断した患者はいなかった。

図3  各治療後に患側下側臥位で眼振が消失した患者の健側下側臥位での眼振

健側下側臥位で眼振が消失,または向地性眼振が出現した患者を治療効果ありとする

初診時に治療効果があった10名は,再診時に頭位・頭位変換眼振を認めなかった。初診時に治療効果がなかった5名中1名は当院を受診せず,残りの4名中1名が眼振消失,2名に方向交代性向地性眼振,1名に外側半規管型BPPV(クプラ結石症)の患側と同側の後半規管型BPPVがみられた。つまり,再診しなかった1名を除く初診時に治療効果がなかった4名中3名が改善し,初診時および再診時を合わせると14名中13名(92.9%)が改善した。

 考察

本研究では以下の4点が示された。(1)本治療は他の方法と比べても効果があること。(2)短時間でも重力負荷は,クプラから耳石を剥離するのに効果的であること。(3)患側下頭位をとり続けると,耳石がクプラから剥離していなくても2~12分以内に眼振が消失する場合があること。(4)クプラの管側より卵形嚢側に付着している耳石の関与は少ないこと。

第1に,今回の治療法は従来の方法と比べて効果があることが示された。外側半規管型BPPV(クプラ結石症)に対する初回治療の効果は,modified Gufoni 23~59.6%11)~14),CuRM 36.4%21),modified CuRM 43.8%13),head-shaking 37.3~47.2%11)17),患側下135度法71%18)などと報告されている。今回,初診時に行った一連の治療法により,15名中10名(66.7%)に効果を認め,再診時を含めると受診しなかった1名を除く14名中13名(92.9%)が改善した。

再診時に改善が認められた3名については,自然寛解の可能性も考えられる。しかし,外側半規管型BPPV(クプラ結石症)の自然寛解までの平均期間は13 ± 13日,中央値は7日と報告されている29)。今回の対象となった3名は,発症後3~8日,初回治療後2~5日で改善していることから,本治療法がクプラから耳石の一部を剥離させる,または剥離しやすい状態を誘導することで,自然寛解を促進し,再診時の治療効果を高めた可能性があると考えられる。

また,統計的な解析は行っていないが,初診時に効果を認めなかった患者の年齢(75.0 ± 6.8歳)は,効果を認めた患者の年齢(54.3 ± 11.7歳)と比べて高い傾向にあった。

第2に,短時間でも重力負荷がクプラから耳石を剥離するのに効果的であることが示された。これまで,短時間の重力負荷がクプラから耳石を剥離するのに効果的であるかどうかに関する臨床的な報告はなく,以前報告されたFPPでは12時間患側下側臥位を保つことが必要であった8)9)。今回,患側下135度法18)施行後に耳石がクプラから剥離しなかった11名に対して,10分間の重力負荷を最大2回追加した。最初の患側下側臥位後に3名,2回目の患側下側臥位後に3名,合計11名中6名(54.5%)でクプラから耳石を剥離することに成功した。つまり,患側下135度法18)施行後に2回の患側下側臥位を加えることで,治療効果を15名中4名(26.7%)から10名(66.7%)に高めることができた。この結果から短時間でも重力負荷がクプラから耳石を剥離するのに効果的であることが示された。また,ウシガエル迷路を用いたクプラ結石症に対する耳石剥離操作を調べた研究では,重力負荷は30分以内に10耳中2耳で耳石をクプラから剥離することができたが,30分の慣性負荷では10耳中1耳もクプラから耳石を剥離することができなかった30)。動物実験からも,短時間の重力負荷が有用であることが示唆された。しかし,今回の治療法は重力負荷のみではなく,慣性と重力負荷を組み合わせた方法であることを考慮すると,患側下135度法18)を行うことでクプラと耳石の付着が弱まり,重力負荷がより効果的になった可能性もある。

第3に,患側下頭位をとり続けると,耳石がクプラから剥離していなくても,2~12分以内に眼振が消失する場合があることが示された。理論的には,患側下側臥位で背地性眼振が消失した場合,クプラから耳石が剥離したことを意味する。しかし,一部の患者において,患側下側臥位で眼振が消失しても,健側下側臥位にすると背地性眼振が再度出現し,クプラから耳石が剥離していないことが判明することがあった。このような例は患側下135度法18)施行後に眼振が消失した6名中2名,最初の患側下側臥位後に眼振が消失した7名中4名,2回目の患側下側臥位後に眼振が消失した6名中3名(そのうち1名は向地性から背地性へ方向が変化する二相性眼振)にみられた。二相性眼振がみられたのは,クプラに付着した耳石の一部が剥離し,クプラ結石症と管結石症が併存したためと推測した31)32)。これらの結果から,耳石によるクプラへの刺激が2~12分以内でも順応や疲労現象を起こし,眼振が消失する患者がいることがわかった。したがって,modified Gufoni法10)~14)や患側下135度法18)など,クプラから耳石を剥離する操作を行う際には,耳石が剥離したかどうかを判断するために,患側下側臥位で眼振が消失しても,健側下側臥位で眼振の消失や向地性眼振の出現を確認する必要があることが示された。

第4に,外側半規管型BPPV(クプラ結石症)では,クプラの管側よりも卵形嚢側に付着している耳石の関与が少ないことが示唆された。今回,患側下135度法18)施行後に患側下側臥位を保つことから,耳石がクプラの卵形嚢側から剥離する可能性は低い。耳石がクプラの卵形嚢側に付着している可能性があるのは,患側下135度法18)でクプラの卵形嚢側から耳石が剥離し卵形嚢へ移動した場合,つまり,患側下135度法18)施行後に患側・健側下側臥位の両方で眼振が観察されなかった1名と,治療効果がなかった4名(症例3,6,10,12)の合計5名である。つまり,耳石がクプラの卵形嚢側に付着している割合は多くても15名中5名であり,これまでの報告と比べ少ない。これまでの報告では,耳石はクプラの卵形嚢側に付着していることが多いとされている。Chiou9)らはFPPを行った40名中クプラの管側に耳石が付着しているのが11名,卵形嚢側に付着しているのが29名と報告している。この報告では,FPP後2日目の検査で眼振が向地性眼振に変化した場合は,クプラの管側に耳石があり,眼振が消失した場合は卵形嚢側に耳石があると推測している。しかし,FPPは患側下側臥位を保つため,この方法ではクプラの卵形嚢側から耳石が剥離する可能性は低い。さらにFPPから検査までの2日間にクプラの管側に付着していた耳石が自然と剥離し卵形嚢に移動した可能性もある。Kim20)らは,CuRM を行なった78名のうち,耳石がクプラの管側に付着しているのが30名,卵形嚢側に付着しているのが44名,不明が4名と報告している。この報告ではCuRMの4th positionまで背地性眼振が持続している場合に耳石が卵形嚢側にあると推測している。しかし,クプラの管側から耳石が剥離しなかったために,4th positionまで背地性眼振が持続した可能性もある。すなわち,過去の報告では耳石はクプラの卵形嚢側に付着していることが多いとされているが,実際にはクプラの卵形嚢側に耳石が付着している割合はより少ないと推測される。また,クプラの卵形嚢側から耳石を剥離することが困難なmodified Gufoni法10)~14)と,クプラの管側と卵形嚢側の両方から耳石を剥離することが可能なCuRM20)21)の効果に差がなかったことから,クプラの卵形嚢側に付着した耳石の関与は少ないと推測している報告もある13)。外側半規管型BPPV(クプラ結石症)では,治療前に耳石がクプラの管側もしくは卵形嚢側のどちらに付着しているのかを鑑別することは困難であり,クプラの管側および卵形嚢側の両方から耳石を剥離することができる方法が効果的であると報告されている20)21)。しかし,外側半規管型BPPV(クプラ結石症)において,クプラの卵形嚢側に付着している耳石の関与は少ないため,今回の方法でも効果があったのではないかと推測した。

外側半規管型BPPV(クプラ結石症)の治療には様々な方法が提案されている。しかし,耳石をクプラから剥離する操作が必要なため,半規管結石症に比べて1回の治療では効果が得られにくく,標準的な治療法は確立していない6)7)。外側半規管型BPPV(クプラ結石症)は他のBPPVと比べ自然治癒しやすいが29)33),患者は仰臥位で左右に寝返りをすることが困難になり,心理面や行動に大きな負担がかかる。このため,できるだけ早く症状を緩和する必要がある23)。今回検討した治療法は,従来の方法と同様に耳石をクプラから剥離し,その後剥離した耳石を卵形嚢内に移動させる方法である。患側下135度法18)施行後に短時間患側下側臥位を保つだけで,15名中10名(66.7%)に効果が認められた。健側下側臥位で耳石がクプラから剥離したことを確認し,その後同じ臥位で引き続き耳石を卵形嚢に移動させることができ,診療所でもベッドがあれば簡単に実施できる。また,患側下135度法18)以外に,head-shaking 11)17)やmodified Gufoni法10)~14)などの操作に患側下側臥位を組み合わせることも可能であり,患側下側臥位をこれらの操作と組み合わせることで,単独で治療するよりも治療成績を向上させることが期待される。加えて,治療による合併症や副作用を訴える患者はいなかった。除外基準を守り,治療前に十分な説明を行うことで患者に安心感を与えれば,安全に治療操作が可能であると推測される。

今回の治療法には,患側下135度法18)の施行回数や仰臥位を保つ時間について議論の余地があり,今後の検討が必要である。また,全ての患者が発症後3日以内に治療を行っていることから,発症後長期間経過した難治性外側半規管型BPPV(クプラ結石症)に対しても同様な効果が期待できるかどうか,不明点も存在する。本研究は単一施設における後ろ向き観察研究であり,対象数も少ない。この手技の効果を正しく評価し不明点を解決するためには,より多くの対象を集めた厳密な研究が必要である。

利益相反に該当する事項はない。

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