2025 年 84 巻 4 号 p. 213-218
Managing acute vertigo in the emergency department (ED) presents several challenges: (1) emergency physicians must differentiate dangerous cases of vertigo; (2) determining the appropriate department to admit the patient to for undiagnosed, but admission-requiring vertigo can be difficult; (3) contacting and calling the on-call physician responsible for the hospitalized patient is necessary; and (4) significant time is required to manage cases where medically stable patients refuse to go home due to anxiety or social reasons. These issues place a heavy burden on the ED staff.
To address these challenges, we introduced a clinical pathway for the hospitalization of patients with acute vertigo. Dangerous causes of vertigo, such as cerebral infarction, are ruled out by obtaining brain MRI with diffusion-weighted imaging. The designated admitting department is otolaryngology. Emergency physicians can apply the pathway at their discretion without consulting an otolaryngologist. Eligible patients include those experiencing continuous vertigo for more than one hour. Additionally, patients who request hospitalization, even for social reasons, are also eligible.
The implementation of this pathway not only reduced the burden on the ED staff but also led to positive outcomes, including an increase in the number of hospitalized patients.
急性めまいの原因疾患には,中枢性めまいなど迅速な対応を要する疾患がある一方,大多数は末梢性めまいなど生命予後に影響を及ぼさない予後良好な疾患である。また,急性めまい患者は診療時間外に救急外来を受診することが多いが,救急外来ではめまいの診療に慣れていない救急担当医師が,脳血管障害や循環障害に起因する生命予後に影響を及ぼす可能性のある致死性疾患を鑑別している。さらに,予後良好なめまいと判断できても,めまい症状が重度である場合には入院にて経過観察をする必要が生ずる。今回,救急外来における急性めまい診療に関する問題のいくつかを解決するために,救急外来にて救急担当医師の判断で適用可能な,急性めまい経過観察入院のためのクリニカルパス(めまいパス)を,当大学の関連病院である一宮市立市民病院にて導入した1)。その導入効果を含め,めまいパスを紹介する。
救急外来での急性めまい診療の課題として,1)救急担当医師が致死性疾患を鑑別する必要があること,2)めまいの鑑別診断はできていないが入院を必要とするめまい患者において主科の決定を悩むこと,3)入院時主治医となる待機医師へ連絡・呼び出しが必要なこと,4)医学的に帰宅可能と判断されるめまい患者が不安や社会的事情で帰宅を拒んだ場合の対応に時間を要することなどがあり,救急外来に関わる医療者の負担が大きい。
まず,急性めまいの大多数は末梢性めまいなど生命に関わらない予後良好なめまいであるが,救急外来を受診しためまい患者における脳梗塞・脳出血などの急性脳血管障害の頻度は1.5~6%,不整脈などの循環器系疾患の頻度は1.3%と報告されており2)~5),生命予後に影響する致死性疾患は少なくない。その鑑別には,主観的評価として,問診(意識消失・頭痛・神経症状)・神経所見(脳神経所見・小脳失調・麻痺・眼振),客観的評価として,採血(貧血・血糖値異常)・心電図(不整脈)・頭部CT・頭部MRIなどを用いるが,慌ただしい救急外来にて,常に質を保って鑑別するのは困難である。全ての医師が同等の判断ができる客観的評価を用いて一定水準の鑑別方法を取り入れることが望まれる。
次に,脳血管障害などの緊急を要する疾患は否定できても鑑別診断ができていないめまい症例において,めまい症状が重度で帰宅できない場合,経過観察入院をどの診療科でするべきかを悩むことがある。2024年に名古屋市立大学の関連病院19施設にて調査をしたところ,そのような未鑑別めまい症例の入院先について,6施設が耳鼻咽喉科に入院,11施設が耳鼻咽喉科を含む脳神経内科,脳神経外科,内科,救急科など複数科のいずれかにその都度決定して入院,2施設が当直医師の診療科に入院という形で運用されていた(図1A)。そして,主科が耳鼻咽喉科と決定した場合に,入院時指示をするのは,3施設(既にめまいパスが導入されている施設)が救急担当医師の判断にて指示をする,10施設にて耳鼻咽喉科の待機医師の許可を得て救急外来の医師が指示をする,6施設にて耳鼻咽喉科の待機医師が来院して指示をする形で運用されていた(図1B)。経過観察を目的としためまい入院患者が生ずるたびに,主科決定をする業務,待機医師への連絡業務,待機医師が来院して行う業務について,タスクシフトなどの工夫で働き方の改善が望まれる。

A 鑑別診断がなされていないめまい患者の入院診療科
B 耳鼻咽喉科への入院決定時,入院指示出しをする医師
C 救急外来にて急性めまい患者の経過観察時間(救急担当研修医55名調査)
D 帰宅許可できる急性めまい患者を帰宅させるのに苦労した経験(救急担当研修医55名調査)
19施設の研修医(計55名)に,医学的に帰宅可能なめまい患者を帰宅させるために苦労した経験があるかをアンケート調査したところ,50名(90.9%)が苦労した経験があった(図1C)。めまい症状が残存していて不安を感じる患者は,入院を希望し帰宅を拒む場合が少なくない。帰宅するよう説得することに時間をかけるよりも,入院を検討するのも良いと考える。さらに,めまい患者の診察後,点滴などで経過観察をする場合,帰宅か入院の判断をするまでの時間を調査したところ,2時間以内が18名(32.7%),3時間以内が23名(41.8%),3時間以上が14名(25.5%)であった(図1D)。判断まで長時間,救急外来に患者が滞在することになり,救急に関わるスタッフの負担が大きいと考えられる。
今回紹介する,一宮市立市民病院で導入しためまいパスは,以上の課題に対応するために,致死性疾患を頭部CT,頭部MRI(拡散強調画像)にて鑑別し,未鑑別のめまい症例の経過観察入院は全て耳鼻咽喉科に入院とし,さらに救急担当医師が耳鼻咽喉科医に問い合わせることなく入院適応の決定や指示をするという,救急に関わるスタッフの負担が少なくなる工夫をしたものである。
めまいパスの概要を表1に示す。入院診療科は耳鼻咽喉科であるが,救急を担当する医師もこのパスを自らの判断で適用できる。適応疾患は急性めまい症,パス日数は「前庭機能障害(手術なし)」「めまい(末梢前庭以外)」のDPC II期の期間に合わせ4日とした。適用基準は,①1時間以上持続または反復する急性めまいであり,②患者または家族が入院を希望している(独居などの社会的事情も含む)か,医師が入院を必要と判断していることとした。除外基準は,①中枢性めまい,②失神性めまい,③耳鼻咽喉科以外に入院するのがふさわしいと判断しためまいである。中枢性めまいの否定は,中枢性を疑う病歴や脳神経学的所見がないことに加え,全例頭部CTと頭部MRI(拡散強調画像のみで可)を行い脳出血や脳梗塞など急性脳血管障害を示唆する所見を認めないことで行う。耳鼻咽喉科以外への入院が適当と考えられる例としては,低血糖,悪性腫瘍によるものなど救急の医師が鑑別できた例を想定した。上記基準を設けることで,適用される患者は末梢性めまい,または,緊急を要さないめまいに概ね限られることになる。退院基準は,めまいが軽快傾向であること,トイレ歩行が可能であること,食事摂取が良好であることとした。
| パス名 | 急性めまいのクリニカルパス |
| 入院診療科 | 耳鼻咽喉科(但し,適用は救急担当医師も可能) |
| 適応疾患 | 急性めまい症 |
| 日数 | 4日間 |
| 適応基準 | ・1~3時間以上持続または反復する急性めまい ・医師が入院が必要と判断 または 患者が入院を希望(社会的入院も可能) |
| 除外基準 | ・中枢性めまい 頭部CT,頭部MRI(DWI条件)にて急性脳血管障害を除外 MRI撮影が困難な場合は中枢性を疑う所見がないことで代用 ・失神性めまい ・明らかに耳鼻咽喉科以外への入院が適当と考えられるめまい 例:低血糖など |
| 退院基準 | ・めまいが軽快傾向 ・トイレ歩行が可能 ・食事摂取が良好 |
一宮市立市民病院では,クリニカルパス委員会,救急外来委員会,医局会にてこのパスについて承認を得て運用を開始した。頭部MRIを全例に行うことに関して,当直する放射線技師全員が頭部MRIの拡散強調画像条件を撮影できるようにした。また,救急外来からの時間外緊急入院はHCU(high care unit)を使用するルールが以前よりあり,本パスの適用患者についてもHCUに入院し,翌日日勤帯に耳鼻咽喉科病棟へ転棟することとした。
次に医療者用のめまいパスを提示する(表2)。達成目標は,初日は安静に過ごすことができるとし,4日目には歩行が一人で不安なくできるとし,徐々に目標を上げた。アウトカムには,新たな頭痛・神経症状がないことという項目を入れ,神経症状が出現すれば医師に報告されるようにした。一般指示の1日目には心電図モニター管理をすることを入れている。入院時には神経症状が明らかでなくても,その後に徐々に神経症状の出現やバイタルサインの変化が生ずる患者に対するリスク管理の目的でモニター管理をしている。翌日以降に耳鼻咽喉科医が診察し,新たな神経症状の出現がないことや症状の回復傾向を確認できた時点で,モニター管理を終了する。処方は,一般的な嘔気時・不眠時頓用薬の指示があり,3日目以降に抗めまい薬の内服を開始することにしている。点滴は,補液を目的とした維持輸液の持続点滴を行う。食事摂取が7割以上可能であることが確認できれば,看護師判断で持続点滴の終了が可能である。また,制吐薬のメトクロプラミド10 mgを嘔気時の頓用指示で出している。当施設では,7%炭酸水素ナトリウム40 mlの静脈注射を1日1回行っている。さらに,翌日以降の診察にて,前庭神経炎や突発性難聴と診断された場合は,副腎皮質ステロイドを追加投与している。検査は,翌日以降に聴力検査を行うこととしている。安静度は入院時は病室内,翌日以降ふらつきの残存に配慮しながら徐々に病院内へと安静解除をしている。食事については,適宜食べやすいものへの変更を許可している。
表3に患者用のめまいパスの内容を示す。退院の目標は,トイレ歩行が自力ででき,食事摂取が普段の7割程度できることとし,退院目標に達しても入院継続を希望される場合は後方病院への転院の支援をすることを記載している。前庭神経炎などでは必要に応じて5日以上入院管理を行うが,自宅で過ごすことに不安あるなど社会的な理由で継続入院の希望がある場合は,転院支援をすることを早期より伝えることにより,速やかな退院や転院が可能となっている。
| 1日目(入院日) | 2日目 | 3日目 | 4日目(退院予定日) | |
|---|---|---|---|---|
| 治療他 | 持続点滴をします 常用薬は確認後継続します |
食事や水分が十分に摂取できたら持続点滴を終了し内服に切り替えます | ||
| 頭痛・しびれ等の他の症状が出たらすぐにお知らせください | 医師の診察があります | 医師の診察後 10時退院予定です |
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| 検査 | MRIなど | 聴力検査 | ||
| 観察 | 適宜検温を行います | |||
| 食事 | 食事形態は体調に合わせます | 徐々に常食に切り替えます | 常食(普段の7割程度摂取できることが目標です) | |
| 排泄 | めまいが強い間はベッド上で介助します | ふらつきがある場合はトイレに行く際は,ナースコールで呼んでください | トイレ歩行が自力でできることが退院の目標です | |
| 清潔 | 清拭 | めまいが落ち着いたら,シャワーに入れます | ||
| 活動 | 病室内 | 病棟内 | 病棟内 | 院内 |
| 教育指導説明 | 入院の説明 病気の説明 |
離床の必要性 リハビリの必要性 |
退院説明(次回受診日,内服薬など) 退院が難しい場合は転院先を紹介します |
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一宮市立市民病院での,めまいパス導入効果を検討した。対象は一宮市立市民病院(660床,耳鼻咽喉科常勤医師6名)に,めまいパス導入前の1年間(2017年10月~2018年9月)と,導入後の1年間(2018年10月~2019年9月)に,急性めまいで受診し,耳鼻咽喉科に入院した患者とした。
救急外来を受診した急性めまい患者は,導入前が627例に対し導入後は656例と微増であったが,そのうち入院した患者は45例(全体の7.2%)から102例(全体の15.5%)と2倍以上に増加した(図2)。その中で,耳鼻咽喉科への入院患者数は6例(めまいによる全入院患者の13.3%)から78例(めまいによる全入院患者の76.5%)へと13倍に増加した。耳鼻咽喉科に入院した患者の入院期間は導入前が5.3 ± 2.6日,導入後が4.2 ± 0.5日と有意に減少した(p < 0.001, t-test)。耳鼻咽喉科に入院後に中枢性めまいや緊急対応を必要とするめまいが判明した症例は認めなかった。入院した患者のめまい診断名は,導入前と比較し,導入後は,末梢性めまい・原因不明とされる症例数の割合が増加した。これは,翌日に耳鼻咽喉科医が診察するまでに眼振所見が消失し,早期に回復する軽症例が多く含まれていたことが関係すると考えられた。

このパスの導入による,救急に関わるスタッフの負担軽減以外の副次的な利点として,入院期間の短縮化・入院患者数増加など病院経営面の改善があった。全例にMRIを撮影することに関して,過剰検査との批判も懸念事項ではあったが,救急担当医師,患者ともに,安心を得ることで精神的な安全性が高まり,医療安全的にも許容できると考えられた。
問診と神経学的所見から致死性疾患を鑑別して必要な症例に画像検査を追加し,また,勤務時間外であっても専門医師が対応するという,従来の丁寧な診療も重要であるが,このめまいパスのように,致死性疾患を一定レベルで鑑別し,医療者の働き方を改善させることも同じように重要である。施設によって,耳鼻咽喉科の待機医師に電話連絡を必須とするなど適宜アレンジする必要はあるものの,多くの施設にとって有益となる取り組みと考え,当大学の関連病院に順次めまいパスを導入している。最後に,救急対応までは働き方など能率を重視したとしても,その後,主治医として対応をする耳鼻咽喉科医は,めまい患者に対して丁寧に問診,神経所見を確認し,的確な診断と治療を行うべきである。
利益相反に該当する事項はない。