2025 年 84 巻 6 号 p. 480-494
Unilateral peripheral vestibular lesions cause a reduction in neural activity within the ipsi-lesional medial vestibular nucleus (ipsi-MVe), resulting in both static and dynamic asymmetries in vestibulo-ocular and vestibulo-spinal reflexes. These asymmetries manifest as spontaneous nystagmus, postural deviation, oscillopsia, and an unsteady gait. However, these behavioral deficits recover over time through a process known as vestibular compensation, which can be divided into static and dynamic phases.
The initial phase of static vestibular compensation involves plastic changes in the cerebello-vestibular and vestibular commissural inhibitory pathways, which lead to suppression of neurons in the contra-lesional medial vestibular nucleus (contra-MVe) and help restore symmetrical resting activity of MVe neurons at low levels. A decrease in the frequency of spontaneous nystagmus serves as an indicator of this initial compensation process. Short-term administration of diazepam, a GABAA receptor agonist, accelerated this initial process in rats. Accordingly, short-term administration of diazepam is recommended for the treatment of acute vertigo in patients with unilateral vestibular dysfunction.
In the late phase of static vestibular compensation, the resting activity of the ipsi-MVe neurons gradually recovers due to changes in the cell membrane properties, which enhance intervestibular nuclear activity to near-normal levels without suppressing contra-MVe neurons. Reduction of MK801-induced Fos-positive neurons in the contra-MVe reflects this late compensation process. Long-term administration of betahistine, a histamine H3 receptor antagonist, accelerated the late compensation process in rats. Accordingly, long-term administration of betahistine is recommended for the treatment of subacute vertigo in patients showing no compensation for unilateral vestibular dysfunction.
Dynamic vestibular compensation involves restoration of neuronal sensitivity to head motion via synaptic plasticity mechanisms, such as long-term potentiation and commissural sprouting. This process reinstates dynamic reflexes and is facilitated by early mobilization and vestibular rehabilitation exercises. These are recommended for the treatment of chronic vertigo in patients with uncompensated unilateral vestibular dysfunction.
前庭神経炎,めまいを伴う突発性難聴,内耳炎などの末梢性前庭疾患,または前庭神経切断術,内耳破壊術,聴神経腫瘍摘出術などの手術により一側の末梢前庭機能が障害されると,著明な自発眼振や平衡失調が出現する。急激に生じた一側末梢前庭障害による前庭系の左右差により惹起された前庭動眼反射系および前庭脊髄反射系の症状が,障害された末梢前庭機能が回復しなくても,中枢前庭系の可塑性により時間経過とともに徐々に軽快する現象を前庭代償(vestibular compensation)と呼ぶ1)2)。ラットやモルモットの一側の内耳を破壊すると,健側向きの自発眼振と障害側への頭部の傾きやbarrel rotationと呼ばれる体幹のねじれなどの平衡障害が誘発されるが,前庭代償により時間とともに徐々に軽快する3)(図1)。

一側の内耳が障害されると左右の前庭神経核の活動性に不均衡が生じ,自発眼振(a)や平衡障害(b)が引き起こされる。静的前庭代償により前庭神経核の活動性の左右差が是正されると,自発眼振が消失し(a),平衡障害が回復する(b)。
(松田和徳,他:耳鼻咽喉科臨床 補冊158: 37–50, 2022.より転載)
本稿では,一側の内耳を破壊したラットを前庭代償のモデル動物として用いて明らかにされた前庭代償の神経メカニズムについて解説する。さらに,近年の前庭代償の研究における機能的神経解剖学および神経薬理学の知見を踏まえて,「前庭代償の促進」の観点からのめまい治療について解説する。
前庭代償は,静的前庭代償(static vestibular compensation)と動的前庭代償(dynamic vestibular compensation)に分けられる4)5)。静的前庭代償は,さらに前期過程と後期過程に分けられる4)6)(図2)。前庭神経核のニューロンは,内在的なペースメーカー活性と前庭神経からの入力により自発発火が維持されており,平衡の維持に重要な役割を担っている。一側の内耳が障害されると,末梢からの前庭情報の入力が低下することにより,障害側前庭神経核ニューロンの自発発火が低下する。その結果,左右の前庭神経核ニューロンの活動性に不均衡が生じ,静的症状である自発眼振や平衡障害が出現する。それと同時に,障害側前庭神経核ニューロンによる交連線維を介した健側前庭神経核ニューロンに対する抑制が低下することにより,健側前庭神経核ニューロンの自然発火が亢進し,左右の前庭神経核の活動性の不均衡がさらに悪化する7)8)。この左右の前庭神経核の活動性の不均衡を是正するのが中枢前庭系による静的前庭代償である9)10)。静的前庭代償によって前庭神経核の活動性の左右差が是正されると,平衡障害は回復し,自発眼振は消失する。

ラットにおける静的前庭代償の前期過程の指標として,一側内耳破壊術後の自発眼振の頻度の減少で評価することが可能である。一側内耳破壊術によって誘発される自発眼振の頻度は,前庭小脳―前庭神経抑制系である小脳片葉による健側前庭神経核ニューロンの抑制の程度に比例して徐々に減少し,ラットでは内耳破壊術後42時間で消失する。
ラットにおける静的前庭代償の後期過程における障害側前庭神経核ニューロンの活動性の回復は,MK801により健側前庭神経核に出現するFos陽性ニューロン数の減少で評価できる。ラットでは,一側内耳破壊後にMK801により健側前庭神経核に出現するFos陽性ニューロンが約14日で消失し,小脳片葉による健側前庭神経核の抑制がなくても左右の前庭神経核の活動性が均衡して静的前庭代償の後期過程が完成する。
静的前庭代償の前期過程では,前庭小脳-前庭神経核抑制系と前庭神経核間の交連線維抑制系の可塑的変化により健側前庭神経核が抑制され,左右前庭神経核間の活動性の不均衡が是正される6)11)(図3-1)。静的前庭代償の後期過程では,低下していた障害側前庭神経核ニューロンの自発発火が回復し,前期過程で生じていた健側前庭神経核への抑制がなくても左右の前庭神経核の活動性が均衡する12)(図3-2)。

(a)通常,小脳片葉はGABA作動性に前庭小脳―前庭神経抑制系経路を介して,同側有意に前庭神経核ニューロンを抑制する
(b)一側の内耳を破壊すると,障害側前庭神経核の自然発火が著しく低下し,左右の前庭神経核の活動性に不均衡が生じる。
(c)一側内耳破壊術の直後,障害側の前庭神経核のアセチルコリン作動性ニューロンの一部が活性化し,コリン作動性苔状線維入力が静的前庭代償の前期過程を引き起こす。
(d)NMDA受容体を介した前庭小脳―前庭神経GABA作動性抑制系の可塑的変化が誘導され,プルキンエ細胞により健側前庭神経核の活動性が抑制される。静的前庭代償の前期過程が進むにつれて,前庭神経核の活動性の左右差が是正される。

(a)一側内耳破壊術後の静的前庭代償の前期過程において,小脳による健側前庭神経核の活動性が抑制され,左右の前庭神経核の活動性の不均衡が是正される(図3-1dと同様)。
(b)一側内耳破壊術後の静的前庭代償の後期過程では,低下していた障害側の前庭神経核ニューロンの自発発火が徐々に回復するのに比例して,健側前庭神経核へのNMDA受容体を介した前庭小脳―前庭神経核抑制系である小脳片葉によるGABA作動性抑制が減弱する。
(c)障害側の前庭神経核ニューロンの自然発火が回復し,静的前庭代償の後期過程が進行すると,健側前庭神経核への抑制がなくても,前庭神経核の活動性の左右差が均衡する
Ach:アセチルコリン,NMDA-R:NMDA受容体,GABAA-R:GABAA受容体,Glu:グルタミン酸
(松田和徳,他:耳鼻咽喉科臨床 補冊158: 37–50, 2022.より転載)
動的前庭代償は,障害側前庭神経核ニューロンの回転刺激に対する反応性が回復することで達成される。障害側前庭神経核ニューロンの反応性の回復は,健側前庭神経核ニューロンからの交連線維を介して行われることから,健側前庭神経核ニューロンの動特性の変化や障害側前庭神経核ニューロンへの交連線維のシナプス発芽などが関与すると考えられている10)。しかし,頭部運動や体動による前庭刺激によって誘発される眼振や平衡失調などの動的症状は,静的前庭代償に続いて動的前庭代償によって徐々に代償されるが,完全には回復しない13)。
静的前庭代償の前期過程では,前庭小脳-前庭神経核抑制系の可塑的変化が生じる。前庭小脳である小脳片葉のプルキンエ細胞はGABA作動性であり,軸索を前庭神経核に投射して抑制性のシナプスを形成している。正常なラットの小脳片葉を破壊(unilateral flocculectomy: UF)すると,活性化されたFos陽性ニューロンが前庭神経核に同側優位に出現する14)(図4a;r-UFあるいはl-UF)。これは,小脳片葉を破壊することで出現するFos陽性ニューロンは小脳片葉のプルキンエ細胞からGABA作動性に抑制を受けており,脱抑制によって活性化されたと考えられる。このことから,正常な状態では,小脳片葉は同側優位に前庭神経核を抑制していることが示唆された4)(図5a)。ラットの一側の内耳を破壊(unilateral labyrinthectomy: UL)すると,障害側前庭神経核ニューロンの自発発火が著しく低下し,左右の前庭神経核の活動性の不均衡が生じて眼振が出現する4)15)16)(図5b)。その後,眼振が消失したラットの障害側小脳片葉を破壊すると,消失していた眼振が再び出現する脱代償が生じ,同時に対側である健側前庭神経核にFos陽性ニューロンが出現する14)(図4b:r-UF)。この健側前庭神経核に出現したFos陽性ニューロンは,障害側小脳片葉のプルキンエ細胞から対側性に抑制されていたと考えられる。以上の研究結果から,一側内耳破壊後の静的前庭代償の前期過程において,障害側小脳片葉から前庭神経核への抑制パターンが同側優位(図5a)から対側優位(図5c)に変化したことを示唆している。さらに,障害側小脳片葉が健側小脳片葉とともに健側前庭神経核を抑制することで,前庭神経核の活動性の左右差が是正され,眼振が消失したと考えられている4)。

(a)正常ラット(NOR)の右小脳片葉を破壊すると(r-UF),前庭神経核(MVe)に右側優位にFos陽性ニューロンが出現する。正常ラット(NOR)の左小脳片葉を破壊すると(l-UF),前庭神経核に左側優位にFos陽性ニューロンが出現した。
(b)正常ラット(NOR)の右内耳を破壊すると(r-UL),一過性に右前庭神経核にFos陽性ニューロンが出現した。その後,右小脳片葉を破壊すると(r-UF),左前庭神経核にFos陽性ニューロンが出現した。右内耳破壊後(r-UL)に左小脳片葉を破壊すると(l-UF),左前庭神経核にFos陽性ニューロンが出現した。
MVe:medial vestibular nucleus,UF:unilateral flocculectomy,UL:unilateral labyrinthectomy,1つの点(・)は20個のFos陽性ニューロンを表す
(Kitahara T, et al.: Neuroscience 76: 571–580, 1997.より転載)

(a)正常ラットでは,小脳片葉は同側優位に両側の前庭神経核を抑制している。
(b)一側の内耳を破壊すると,同側の前庭神経核ニューロンの安静時の活動性が著しく低下する。左右の前庭神経核ニューロンの活動性の不均衡が生じると,自発眼振や平衡障害が誘発される。
(c)一側内耳破壊術後の静的前庭代償の前期過程において,障害側小脳片葉の前庭神経核の抑制パターンが同側優位から対側優位に変化し,前庭神経核の活動性の左右差が是正される。
(Takeda N, et al.: Auris Nasus Larynx 51: 328–336, 2023より転載)
ラットの一側の内耳を破壊すると,障害側前庭神経核ニューロンの自発発火が著しく低下するが15)16),われわれはFos陽性ニューロン,すなわち活性化したニューロンが障害側前庭神経核に出現することを明らかにした17)(図4b:r-UL,図6a)。Fosは最初期遺伝子c-fosの遺伝子産物であり,神経活性化マーカーである。この障害側前庭神経核に出現した活性化ニューロンの一部は,アセチルコリン合成酵素であるコリンアセチルトランスフェラーゼ(choline acetyltransferase: ChAT)陽性であり,逆行性トレーサーを用いた研究から,それらが苔状線維として前庭小脳である小脳片葉に投射していることが示された18)(図6b)。さらに,エチルコリンマスタードアジリジニウムイオン(ethylcholine mustard aziridinium ion: AF64A)を用いて小脳片葉に投射するアセチルコリン作動性苔状線維をあらかじめ破壊しておくと,一側内耳破壊後の自発眼振が増悪した18)。

(a)ラットの一側の内耳を破壊すると,6時間後に障害側の前庭神経核にFos陽性ニューロン,すなわち活性化したニューロンが発現し,前庭代償の引き金となる。
(Matsuda K, et al.: Acta Otolaryngol 139: 505–510, 2019.より転載)
(b)Fosとcholine acetyl transferaseの二重免疫組織化学法により,障害側の前庭神経核におけるFos陽性ニューロン(矢印)の一部はcholine acetyl transferase陽性(矢頭)で,苔状線維として小脳片葉に投射していることが明らかとなった。Fos陽性免疫反応は核内にのみ局在し,choline acetyl transferase陽性免疫反応は細胞体に局在していた。二重に染色されたニューロンは一側内耳破壊術によって活性化されたコリン作動性ニューロンを意味する。
(Fukushima M, et al.: Neuroscience 102: 159–166, 2001.より転載)
以上の研究結果から,前庭代償の前期過程の神経メカニズムを以下のように考えることができる。正常な状態では,小脳片葉は同側優位に前庭神経核を抑制しているが4)(図3-1a),一側内耳が障害されると,障害側前庭神経核のほとんどのニューロンの自発発火が消失して左右の前庭神経核の活動性に不均衡が生じ,眼振や平衡障害が出現する4)(図3-1b)。しかし,障害側前庭神経核のアセチルコリン作動性ニューロンの一部が活性化し,静的前庭代償の前期過程の引き金となり,苔状線維を介して小脳片葉の顆粒細胞に入力する。顆粒細胞は平行線維により小脳片葉のプルキンエ細胞にNMDA型グルタミン酸受容体を介して入力し,プルキンエ細胞はGABA作動性に健側前庭神経核を抑制することにより,障害側小脳片葉の前庭神経核の抑制パターンが同側優位から対側優位に変化する4)(図3-1c)。この前庭小脳-前庭神経核抑制系の可塑的変化によって,前庭神経核の活動性の左右差が是正され,自発眼振が消失し,平衡障害が回復する4)(図3-1d)。
2. 前庭小脳におけるプルキンエ細胞の細胞内シグナル伝達の変化静的前庭代償の前期過程では,前庭小脳-前庭神経核抑制系におけるプルキンエ細胞の細胞内シグナル伝達が変化する。ラットの一側の内耳を破壊すると,小脳片葉においてプロテインホスファターゼ2A(protein phosphatase 2A: PP2A)のβサブユニットのmRNAが一過性に上昇する19)。PP2Aは小脳の平行線維とプルキンエ細胞との間のシナプス伝達が長時間低下する長期抑制(long-term depression: LTD)に関与しており,ラットの一側内耳破壊術後にPP2A阻害薬であるオカダ酸を小脳片葉に投与すると,静的前庭代償が遅延する19)。
また,ラットの一側の内耳を破壊すると,小脳片葉においてグルタミン酸受容体のδ2サブユニット(GulR δ2)のmRNAの発現が一過性に減少する19)。GulR δ2は平行線維とプルキンエ細胞との間の神経伝達に関与しており,GulR δ2欠損マウスではLTDは誘導されない。ただし,GulR δ2欠損が静的前庭代償に及ぼす影響については報告が異なっている20)21)。また,小脳でLTDを誘導するプロテインキナーゼ(protein kinase C: PKC)のタンパク発現が,一側内耳破壊術後に小脳片葉で一過性に低下することも報告されている22)。
以上の結果から,PP2A,GulR δ2,PKCなどの分子が,内耳破壊後のプルキンエ細胞におけるLTDを抑制し,静的前庭代償の前期過程における小脳片葉から前庭神経核への抑制パターンを変化させている可能性が考えられている。
3. 前庭神経核間の交連線維抑制系の可塑的変化静的前庭代償の前期過程において,前庭神経核間の交連線維抑制系の可塑的変化も生じている。前庭神経核間には交連線維があり,左右の前庭神経核は互いをGABA作動性に抑制性に調節している。一側の内耳が障害されて障害側前庭神経核ニューロンの活動性が低下すると,障害側前庭神経核ニューロンによる交連線維を介した健側前庭神経核ニューロンの抑制が低下し,健側前庭神経核ニューロンの自発発火が亢進する。また,健側前庭神経核の自発発火が亢進すると,障害側前庭神経核ニューロンへの交連線維を介した抑制性入力が増加するために,その活動性がさらに低下する。その結果,左右の前庭神経核の活動性の不均衡がさらに悪化する。
静的前庭代償の前期過程では,前庭神経核間の交連線維抑制系において健側前庭神経核ニューロンのGABA受容体がup-regulationし,亢進していた健側の前庭神経核ニューロンの自発発火が低下する23)。一方で,障害側前庭神経ニューロンではGABA受容体がdown-regulationし,低下していた障害側の前庭神経核ニューロンの自発発火が亢進する23)。その結果,前庭神経核の活動性の左右差が是正される。これが静的前庭代償の前期過程のもう一つの神経メカニズムであると考えられている。
ラットの一側の内耳を破壊すると自発眼振が出現するが,小脳片葉による健側前庭神経核の抑制に比例して自発眼振の頻度は徐々に減少し,静的前庭代償の前期過程において両側の前庭神経核の活動性の左右差が是正されると自発眼振は消失する。したがって,一側の内耳を破壊したラットを静的前庭代償モデルとして用いる場合,静的前庭代償の前期過程は内耳破壊後の自発眼振の頻度の減少によって評価することができる24)。ラットでは一側内耳破壊後の自発眼振は約42時間で消失し,静的前庭代償の前期過程が完成することが明らかとなった24)(図2)。
静的前庭代償の前期過程において,障害側小脳片葉が健側前庭神経核を抑制することで前庭神経核の活動性の左右差が是正される4)(図3-2a)。その後に,静的前庭代償の後期過程が進行する。静的前庭代償の後期過程では,障害側前庭神経核ニューロンの自発発火が徐々に回復し,それに応じてNMDA受容体を介した小脳片葉によるGABA作動性に調節していた健側前庭神経核への抑制が徐々に減弱する4)(図3-2b)。その結果,障害側小脳片葉による健側前庭神経核への抑制がなくても,左右の前庭神経核の活動性が均衡し,ほぼ正常レベルに再調整される4)15)(図3-2c)。
低下していた障害側前庭神経核ニューロンの自発発火が回復することが,静的前庭代償の後期過程には不可欠である。一側内耳破壊後のモルモットにおいて,障害側前庭神経核ニューロンの内在的なペースメーカー活性が増加することが報告されている15)。さらに,モルモットの一側内耳破壊後に,障害側前庭神経核ニューロンの細胞膜特性が変化して,tonicかつ規則的に自発発火するtype Aニューロンが増加し,phasicかつ不規則に自発発火をするtype Bニューロンが減少することが報告されており,このような細胞膜の活性コンダクタンスの変化が興奮性求心性神経の入力の消失を補っていることが示唆されている25)。したがって,一側内耳破壊後の静的前庭代償の後期過程における障害側前庭神経核の自然発火の回復と維持には,細胞膜特性の可塑的変化が関与していると考えられている26)27)。
一側内耳破壊後の静的前庭代償の後期過程では,障害側前庭神経核ニューロンの自然発火が徐々に回復し,左右の前庭神経核の活動性が均衡し,ほぼ正常レベルに再調整される。したがって,前庭代償の後期過程の理想的な指標は,障害側前庭神経核ニューロンの自然発火の回復を測定することである。しかし,前庭代償の後期過程における障害側の前庭神経核ニューロンの自発発火の回復を,生体内で長期間にわたり経時的に電気生理学的に記録することは困難である。最近,われわれは一側内耳破壊を行ったラットを前庭代償の動物モデルとして用いて,静的前庭代償の後期過程である障害側前庭神経核ニューロンの活動性の回復の程度を評価するための新しい免疫組織化学的視標を報告した28)。一側内耳破壊後に眼振が消失したラットにNMDA型グルタミン酸受容体拮抗薬であるMK801を投与すると,消失していた眼振が再び出現する脱代償が生じる29)。この過程で,静的前庭代償の前期過程で小脳片葉によって抑制されていた健側前庭神経核ニューロンが脱抑制され,Fosの発現が確認される(図7)17)28)。

(a)一側内耳破壊術後の静的前庭代償の後期過程が進行するにつれて,一側内耳破壊術によって誘発される自発眼振や平衡障害は軽快する。この時期において障害側および健側前庭神経核にFos陽性ニューロンは出現しない。
(b)一側内耳破壊術後に眼振が消失したラットにNMDA型グルタミン酸受容体拮抗薬であるMK801を投与すると,消失していた眼振や平衡障害が再び出現する脱代償が生じ,健側前庭神経核にFos陽性ニューロンが出現する。MK801により健側前庭神経核に出現するFos陽性ニューロンは,小脳片葉により抑制を受けていたと考えられる。
Ach:アセチルコリン,NMDA-R:NMDA受容体,GABAA-R:GABAA受容体,Glu:グルタミン酸
(Matsuda K, et al.: Acta Otolaryngol 139: 505–510, 2019.より転載)
静的前庭代償の後期過程において,障害側前庭神経核ニューロンの自発発火が回復するにつれて,小脳片葉からのGABA作動性抑制経路による健側前庭神経核ニューロンの抑制が減弱し,MK801によって出現するFos陽性ニューロン数が徐々に減少する。このことは,一側内耳破壊後のMK801により健側前庭神経核に出現するFos陽性ニューロン数の減少は,障害側前庭神経核ニューロンの活動性の回復とミラーイメージであることを示唆している。したがって,一側の内耳を破壊したラットを前庭代償の動物モデルとして用いた場合,静的前庭代償の後期過程はMK801により健側前庭神経核に出現するFos陽性ニューロン数の減少によって評価することができる28)。ラットでは,一側内耳破壊後にMK801によって健側前庭神経核に出現するFos陽性ニューロンは約14日で認められなくなり,小脳片葉や交連線維による健側前庭神経核の抑制がなくても左右の前庭神経核の活動性が均衡して静的前庭代償の後期過程が完成する28)(図2)。
一側の末梢前庭が障害されると,静的前庭代償の前期過程と後期過程に続いて動的前庭代償が進行する。動的前庭代償による動的前庭動眼反射および動的前庭脊髄反射の回復に伴い,頭部運動時や体動時のふらつきや動揺視などの頭部運動に伴う動的前庭症状がしだいに改善する。動的前庭代償の回復には,頭部の速度と加速度に対する障害側前庭神経核ニューロンの反応性の回復が必要である。動的前庭代償の過程において,健側前庭神経核ではphasicに不規則に自発発火をするtype Bニューロンが増加し,tonicに規則的に自発発火するtype Aニューロンが減少する。その結果,交連線維を介して障害側前庭神経核にtype Aニューロンが出現し30),障害側前庭神経核ニューロンの回転刺激に対する反応性が回復する。すなわち,障害側前庭神経核ニューロンの動的反応性は健側前庭神経核ニューロンから交連線維を介して行われるため,健側前庭神経核ニューロンの細胞膜の動特性の変化が関与すると考えられている35)。しかし,高い周波数の頭部運動に対する動的前庭反応は,一側内破壊後も長期間にわたって障害されたままである。一次前庭求心性神経線維への高周波刺激後の前庭神経核ニューロンのシナプス長期増強(long term potentiation: LTP)31)や高頻度抑シナプス刺激後の前庭神経核ニューロンの頻度増強(firing rate potentiation)32)も動的前庭代償に関与していると考えられている。さらに,一側内耳破壊術後の前庭神経核における神経新生やシナプス発芽が動的前庭代償に関与する可能性も示唆されている33)。実際,一側内耳破壊術後のネコにおいて,障害側前庭神経核に反応性ニューロンの産生とアストロサイトの産生が観察され,異なる細胞型に分化することで新たな神経ネットワークを構築し,動的前庭代償に寄与していることが報告されている34)35)。
さらに,平衡の維持には前庭情報だけでなく,視覚情報や体性感覚情報も重要である。動的前庭代償の過程において,前庭入力のみに反応する前庭神経核ニューロンが頸部からの体性感覚入力にも反応するようになる。つまり,前庭入力の代行として頸部体性感覚入力などの感覚代行入力に対する前庭ニューロンの反応も,動的前庭代償に寄与している可能性がある36)。
一側の内耳が破壊されると障害側向きの頭部回転による前庭動眼反射の利得は著しく低下する。しかし,低い周波数の障害側向きの頭部回転による前庭動眼反射の利得はしだいに回復し,前庭動眼反射の利得の非対称性は徐々に消失する。したがって,前庭動眼反射の利得の低下や非対称性によって引き起こされていた動的前庭症状の回復は,ヒトや動物における動的前庭代償の指標となる。しかし,高い周波数の障害側向きの頭部回転による前庭動眼反射は,動的代償によっても完全には回復しない37)。
前庭代償を促進する薬物は,めまいの治療薬として用いることができると考えられる。GABAA受容体作動薬は,静的前庭代償の前期過程における前庭小脳-前庭神経核抑制系のプルキンエ細胞から健側前庭神経核への抑制効果を増強し,静的前庭代償の前期過程を促進させる可能性がある38)。ヒスタミンH3受容体拮抗薬はヒスタミン神経終末からのヒスタミンの遊離を増加させ,前庭神経核ニューロンを興奮させることから,静的前庭代償の後期過程を促進する可能性がある39)。さらに,基礎研究の結果を臨床に応用するために行った多施設共同臨床研究の結果から,ベタヒスチンの高用量投与が,前庭代償が遅延して長期に平衡障害を訴える一側末梢前庭障害患者の前庭代償を促進できる可能性が示唆された40)。
めまいの亜急性期には静的前庭代償に続いて動的前庭代償が進行する。動的前庭代償は,健側前庭神経核ニューロンからの交連線維を介した障害側前庭神経核ニューロンの回転刺激に対する反応性が回復することで達成される25)。しかし,動的前庭代償が遅延すると前庭動眼反射や前庭脊髄反射が完全には回復せず,頭部や身体の動きによりめまいや平衡障害が誘発される。そのために,一側末梢前庭障害の患者には,急性期を過ぎたら早期に離床・歩行を開始することが重要である41)。歩行に半規管刺激や耳石器刺激を負荷した動き,すなわち頭部の動きに伴う歩行や加速・減速を伴う歩行,起立して歩行,方向転換や円周歩行を実施するように指導する42)。
GABAは,GABAA受容体,GABAB受容体,GABAC受容体との相互作用を介して抑制性シナプス伝達を媒介し,GABAA受容体とGABAB受容体は前庭反射経路に関与している43)。ジアゼパムなどのGABAA受容体作動薬は,前庭神経炎などの一側末梢前庭障害患者の急性期のめまいやふらつきの治療に広く使用されている44)。ジアゼパムは前庭神経核ニューロンの活動を抑制することから45),その抑制作用がめまいに対する治療効果に関与していると考えられており,前庭抑制薬(vestibular suppressants)に分類されることが多い。ジアゼパムは急性めまいの治療において前庭抑制薬として使用されてきた長い歴史があり,前庭抑制薬は前庭代償を遅延させる可能性があると主張する臨床家もいる46)47)。しかし,この仮説は実験的所見あるいは臨床的所見から支持されていない。さらに,他の研究者らは,モルモットやリスザルで一側内耳破壊後にジアゼパムを複数回投与しても前庭代償が遅延しなかったと報告している48)49)。したがって,前庭代償に対するジアゼパムの効果については,依然として議論の余地がある。
最近,われわれは非線形回帰分析により,浸透圧ミニポンプを用いたジアゼパムの持続投与が,ラットの一側内耳破壊後における自発眼振の頻度を用量依存的に減少させ,さらにその消失時間も用量依存的に有意に短縮させることを明らかにした。この所見は,ジアゼパムが静的前庭代償の前期過程を促進することを示唆している38)。さらに,これらの実験結果は,一側末梢前庭障害患者の急性めまいに対するジアゼパムの短期治療を推奨するものである。最近の臨床エビデンスによると,ジアゼパムは救急外来での急性期の末梢性めまい患者の治療に有効であることが示されている50)。一方で,静的前庭代償の後期過程に対するジアゼパムの長期投与の効果については,依然として不明である。
ヒスタミン神経系は,視床下部の結節乳頭核に存在するニューロンを起始核として,その軸索を前庭神経核に投射している51)52)。ベタヒスチンはヒスタミンH3受容体拮抗薬であり,臨床で抗めまい薬として用いられ,めまい症状の改善に有効であることが示されている53)。さらに,動物実験において,ベタヒスチンがネコの一側前庭神経切断術後の自発眼振の消失を促進することが報告されており,前庭代償を促進することが示唆されている54)。最近,われわれは一側内耳破壊を行ったラットを前庭代償の動物モデルとして用いて,静的前庭代償の前期過程および後期過程に対するベタヒスチンの効果を報告した55)。浸透圧ミニポンプを用いたベタヒスチンの短期間の持続投与は,ラットの一側内耳破壊後の自発眼振の頻度を減少させなかったことから,ベタヒスチンは静的前庭代償の前期過程に影響を与えないことが示唆された。しかし,浸透圧ミニポンプを用いたベタヒスチンの長期間の持続投与は,一側内耳破壊後のラットにおいて,MK801によって健側前庭神経核に出現するFos陽性ニューロン数を用量依存的に減少させたことから,ベタヒスチンの長期投与は静的前庭代償の後期過程を促進することが示唆された39)。
ヒスタミンH3受容体はヒスタミン神経終末のシナプス前膜に存在し,ヒスタミン遊離を抑制するオートレセプターとして作用し55),前庭神経核にもヒスタミンH3受容体が分布している56)。そのために,ヒスタミンH3受容体拮抗薬は前庭神経核におけるヒスタミンの遊離を増加させると考えられている。ラットの前庭神経核にはヒスタミンH1およびH2受容体が発現しており57),ヒスタミンはin vivoおよびin vitroにおいて前庭神経核ニューロンを活性化する58)59)。さらに,ラットにおいて一側内耳破壊後に,障害側前庭神経核でヒスタミンH1受容体の発現が限定的に増加することが報告されている60)。これらの結果は,ヒスタミンH3受容体拮抗薬であるベタヒスチンがヒスタミン神経終末からのヒスタミンの遊離を増加させ,ベタヒスチンによるヒスタミンの増加が一側内耳破壊後の障害側前庭神経核ニューロンを活性化し,障害側前庭神経核ニューロンの活動性の回復を促進することを示唆している。したがって,ヒスタミンH3受容体拮抗薬であるベタヒスチンは静的前庭代償の後期過程を促進すると考えられた。さらに,これらの実験結果は,一側末梢前庭障害後に前庭代償不全を生じている患者における亜急性めまいの治療に対し,ベタヒスチンの長期投与を推奨するものである。臨床的観点から,日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化事業「難治性めまい疾患の診療の質を高める研究難治性めまい研究」班が行った研究では,ベタヒスチンの高用量(72 mg/日)長期投与は,一側末梢前庭障害後の前庭代償不全患者の難治性めまいの治療に有効であることが示唆された40)。高用量のベタヒスチンは,前庭代償不全によりめまいを訴える症例において前庭代償を促進し,めまいの軽減に寄与する可能性がある。しかし,日本ではベタヒスチンの72 mg/日の高用量投与は保険適用外である。
日常診療において,現時点ではベタヒスチンは36 mg/日までの用量が保険適用とされているが,実際には18 mg/日で使用されることが多い。前庭代償の促進効果が用量依存的であることを考慮し,ベタヒスチンは36 mg/日の用量で使用することが推奨される61)。
前庭神経炎,めまいを伴う突発性難聴,内耳炎などの末梢性前庭疾患,または前庭神経切断術,内耳破壊術,聴神経腫瘍摘出術などの手術による一側末梢前庭機能障害後の動的前庭代償による機能回復は,患者によって異なる。前庭神経炎罹患後の患者の半数は,発症後長期間経過しても慢性的な前庭症状を訴えていることが報告されている62)63)。障害側前庭神経核ニューロンの感受性は,交連線維を介して健側前庭神経核ニューロンからの前庭入力をより効果的に利用することで回復することから2),日常生活における頭部運動に伴う前庭入力の増加は,動的前庭代償を促進すると考えられる。したがって,一側末梢前庭機能障害を生じた患者には,動的前庭代償を促進するために早期の歩行が推奨される41)。臨床において急性期を過ぎた段階で,なるべく早い時期に離床を促し,積極的に歩行を行うように指導することが動的前庭代償を獲得する上で重要である。歩行に半規管刺激や耳石器刺激を負荷した動き,すなわち頭部の動きに伴う歩行や加速・減速を伴う歩行,起立して歩行,方向転換や円周歩行を実施する42)。最近の動物実験において,一側内耳破壊術後のマウスへのトレッドミルを用いた前庭リハビリテーションは前庭代償における姿勢制御やバランスの回復を改善させ,その回復には前庭神経核における細胞増殖やミクログリア応答の亢進が関与していると報告されている。さらに,早期の前庭リハビリテーション開始が,動的前庭代償による長期的な機能の回復維持に寄与することが示されている64)。
しかし,動的前庭代償による機能は,一側内耳破壊術後に長期間経過しても完全には回復しない。一側末梢前庭機能障害後に前庭代償が遅延している患者は,めまいや平衡障害によりADL(日常生活動作)が低下し,転倒のリスクの増大やQOL(生命や生活の質)の低下を生じる。ヒトは,日常生活でのさまざまな運動に伴い入力される前庭情報,視覚情報,深部知覚を含む体性感覚情報が中枢神経系内で統合されて,空間識が形成されている。空間識とは,空間における自己の位置,姿勢,運動を複数の感覚系を通じて脳が統合的に認知することである。空間識に基づく運動プログラムと,それに伴い入力される感覚情報は中枢神経内のneural storeに記憶されている。末梢前庭障害により前庭神経核の活動性に左右差が生じた場合は,運動に伴い入力される感覚情報パターンと予測された感覚情報パターンが一致せず(sensory conflict,感覚混乱),形成されていた空間識に矛盾が生じる。その結果,脳内で空間識障害をコードするミスマッチ信号が産生され,めまいや平衡障害が発症する。感覚の混乱が持続すると,中枢神経系における適応により記憶が再構築され,変化した感覚入力に対応が可能となるために65),頭部を積極的に動かす運動によって誘発される感覚混乱情報(sensory conflict information)に繰り返しさらされることで,動的前庭代償が促進されると考えられる66)したがって,頭部の動きを伴う前庭リハビリテーションは,動的前庭代償の促進に有用と考える。
動的前庭代償の促進に加えて,前庭リハビリテーションには,適応(前庭動眼反射と前庭脊髄反射の適応)vestibular adaptationの誘導,感覚代行sensory substitutionと感覚情報の重み付けの変化(感覚再重み付け)sensory reweightingの誘導,慣れhabituationの誘導など,一側末梢前庭障害後のめまいや平衡障害の機能的回復の様々なメカニズムが関与している63)67)。前庭リハビリテーションは,一側末梢前庭機能障害で代償されなかった前庭代償不全患者の慢性期のめまい症状,バランスや歩行障害の改善に有効であることが臨床的に示されている68)69)。
前庭神経炎,めまいを伴う突発性難聴,内耳炎などにより一側の末梢前庭が障害されると,眼振や平衡障害が引き起こされる。しかし末梢前庭機能が回復しなくても,眼振や平衡障害は次第に軽快する。この中枢前庭神経系による末梢前庭障害の機能的代償を前庭代償と呼ぶ。前庭代償には,脳幹,小脳,その他の関連する脳領域における中枢神経系の可塑性が関与している。
一側内耳破壊術後の静的前庭代償の前期過程では,前庭小脳-前庭神経核抑制系および前庭神経核間の交連線維抑制系の可塑的変化により,健側前庭神経核ニューロンの活動性が抑制され,前庭神経核の活動性の左右差が是正される。そして,静的前庭動眼反射および前庭脊髄反射の非対称性により生じていた一側内耳破壊により誘発される自発眼振や平衡失調はしだいに消失する。GABAA受容体作動薬であるジアゼパムの短期投与は,静的前庭代償の前期過程を促進することから,一側末梢前庭障害患者の急性期のめまい治療に推奨される。
一側内耳破壊術後の静的前庭代償の後期過程では,障害側前庭神経核ニューロンの安静時の活動性が,小脳片葉や交連線維による健側前庭神経核ニューロンの抑制がなくても,両側前庭神経核間の活動性をほぼ正常レベルまでに回復する。ヒスタミンH3受容体拮抗薬であるベタヒスチンの長期投与は,静的前庭代償の後期過程を促進することから,前庭代償不全にある一側末梢前庭障害患者の亜急性期のめまい治療に推奨される。
一側内耳破壊後の動的前庭代償では,動的前庭動眼反射および動的前庭脊髄反射が左右対称的に回復し,頭部の速度および角速度に対する障害側の前庭神経核ニューロンの感受性が回復するに伴い,一側内耳破壊により誘発される動揺視と歩行時の動揺がしだいに回復する。一側末梢前庭機能障害のある亜急性期の患者には,動的前庭代償を促進するために早期の歩行が推奨される。前庭リハビリテーションは,動的前庭代償を促進することから,前庭代償不全にある一側末梢前庭障害患者の慢性期の治療に推奨される。
この総説を終えるにあたり,この分野のご指導をいただいた奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科 北原 糺教授,ならびに本原稿に貴重なご助言をいただいた徳島大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 武田憲昭名誉教授に深謝いたします。
利益相反に該当する事項はない。